ミチルの選択②

ミチルとシャーロット。


「ミチルは子供の頃どんな子だったの?」

どんな子?シャーロットはミチルが異世界から来たとは知らない。

その事を言った方が良いのか?悩んでも仕方ねぇし。

「あのさ、驚かないでくれる?」

「?」

「私、異世界から来たんよ」

「あーそうなんだ。そんな気がしてた」

「驚かないの?」

「別に。異世界から来たって人は結構いるよ。あなたは何処から?」

異世界人が結構いる・・・なんだ!気負っていたけど急に気が抜けたわい!

「二ホンだよ」

「あーそんなところから来た人他にも居たなかぁ・・・どの人も優秀みたいだね」


そう言えばとシャーロットは前置きして・・・

「アバンツオ州の総督っていう人、一番偉い人ね。チュウゴクっていうところから

 転生してきたらしいよ。とんでもなく強欲で他人のものも自分のだって!

 そう言い張るんだって。イヤな感じよね」

「あーね」

「となりの州の総督ってのも転生人で・・・

 えーっとあそこは二ホンだったと聞いたんだけどね、アバンツオ州の総督の所為で

 領地をどんどん侵されているらしいよ。とんでもない人だよ」

ふぅ~~んと聞きながらも、どこかで聞いたような話だなぁと思っていた。



やがて二人は、ランブランズ村近郊の魔王軍基地建設現場へ近づいた。

新基地はほぼほぼ出来上がっているようで、その規模は王宮や騎士団官舎を

3倍にしても足らないくらいの巨大なものだ。


衛兵が二人立っているのが見える。


ミチルが衛兵に近づくと槍を突きつけられる「誰だ?」「ミチル」

「ここの管理者に会いたい」

「リナ隊長はお忙しいのだ!帰れ!」

「是非合わせて欲しいのだ」

「ダメだ」

門の外で押し問答をしていると、大隊長の徽章を付けたダンピールがやって来た。

「何をしている」

「はっ!この者が隊長に面会を要求しておりまして」

「どなたでしょうか?」

「ミチルと言えば解る」

「承知しました。ではこちらでお待ちください。お会いになるか聞いてまいります」


「ねぇ、ここって魔王軍の・・・」

「そうだよ。わたしは魔王軍の一員になるんよ」

「えっ?なんで?」

「あなた、私と一緒にって言ったよね?来るよね?」

「え、あ、ああ、、、えーっと。えう、うう、ううん」


やがて大隊長がやって来た。

「隊長がお会いになりますので、どうぞこちらへ。お二人をご案内しろ!」

「はっ!」


「ちょっと!どういうつもり?」

「・・・」

「ねぇ、ミチルってば!」


隊長室へ案内された二人。

「ミチル?」

「リナ、久しぶりだな。元気か?」

「元気は元気だけど、なんで?全く解らないんだけど」

「理子はここにはいないのか」

「いない」

「いろいろ有ったけど、彼女に謝りたいんだ。そのためにここへ来たんよ」

「その気持ちは嬉しいけど、どうだろう、会ってくれるか解らない」

「会えなければそれでも。それなりの事をしたんだし理子には」

「・・・」


「こちらの方は?」

「あ、あたしの相棒、シャーロットって言うんよ。いい子だよ」


「あたしたち騎士団を追放されたんよね」

「え?追放?」

「そう。こないだうちらが襲撃したでしょ?結局負けたじゃん。その責任を取る

 そんなわけでさ。この子は来なくてもいいって言ったけど、付いてきたんよね」


魔道具で本部にいる魔王リコへ連絡すると・・・

「今は会えないって」

「だよねぇ・・・」

「これからどうすんの?」

「できればさ、あんた達と一緒に働くって・・・ダメかな?」

「魔王軍に加わるの?仲間に?理子は・・・うーんどうかなぁ。解らないよな」


「いいって。加わってくれるならそれでもいいって」

「そう。良かった。これで理子への償いが出来るかもな」

「とりあえず、私と一緒にいてくれる?」「あ、いいよ!」


隊長室で幹部隊員をまえにリナが二人を紹介している。

「今日からこの基地で一緒に働くことになった、ミチル殿とシャーロット殿だ

 元騎士団親衛隊の方だが、縁あって我々の仲間になってくれたのだ。

 みな、よろしく頼む」「はっ!」

人間もいればダークエルフもゴブリンもコボルトも。多種多様な種族が混在している

けれど、みなその垣根を越えた感情、友情で繋がっているようにシャーロットには

見えた。「いい感じじゃない?こういうの!ね、ミチル」「そうっすね」



「二人にはしばらく、この部隊の騎士たちを鍛えなおして欲しいのだが

 やってくれるか?やり方は任せるが、どうだろう?」

「解りました。行くところのない私たちにこの厚遇。やらない訳にはいきません!

 ミチルはどう?やってくれる私と一緒に」

「うーっす」

けげんな表情のシャーロットに「この子は現世の頃からこうなの。気にしないで」

「そうですか。解りました今までも、どこか捉えどころがない子って思いましたし」


二人は与えられた部屋で計画を練り始めた。

とは言え、ほとんどはシャーロットが考えていたものだが・・・


次の日から訓練が始まった

「あー、なかなかレベル高いっすね」

「そうね、これじゃああたしたちが負けるのも当然だわ」

「とりま、この人たちのレベルを落とさず、より高いレベルを目指せってね」


時にはミチルが、シャーロットが相手になっても互角に渡り合う騎士たち。

「うん、おまえはこれで良いよ!もっとがんばれや!」「うっす!」「次!」

騎士たちの相手をしているミチルは楽しそうだ。


「そう。こっちへ来るのね。解った。待ってる」

「隊長、どなたかが来られるのですか?」

魔道具で通信をしていたリナの相手は・・・

「魔王さまが来られると。転移装置を使ってね」

「そうですか!魔王さまが。解りました、ではその準備をいたしましょう」

「頼む」

「はっ!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「では行ってくる。レカセ後を頼む」

「わかりましたぁぁぁぁぁ~~~~~ん」(ホントに解ってるのか?)


【トランスファー!】

魔王リコ、ミリア、メレイの3人が魔法陣に片足を乗せると・・・


ボン!


すわぁぁぁぁぁ


「着いたぞ!リナ、ご苦労だったな!」

「魔王さま、ようこそお越しくださいました!

 先ほどクロエ殿もチェンバレン殿も幕僚と共に到着しております!」

魔王軍を率いる3つの部隊のトップがそろっていた。

「クロエ、チェンバレン、キミたちにも苦労を掛けるが今しばらく頑張ってくれ!」

「はっ!ありがたきお言葉を!

 このチェンバレン身命を賭して魔王さまに尽くす所存にございます!」


魔王リコは3人の部隊長の前で。

「本日より、このランブランズ砦がわれわれ魔王軍の拠点だ。

 この基地の運用はリナ。キミに任せたい」

「はっ!ありがたき幸せ!」

「チェンバレン、キミはブーランジュ砦を任せる」

「承知!」

「クロエ、

 キミはこれから州境のアンバル砦を襲撃し我が魔王軍のものと州境を閉鎖せよ!」

「心得ましてございます!かならずや魔王さまに良き知らせを、お届けする所存!」

州境を閉鎖し、すでに国境は閉鎖されているからアバンツオ州から逃げ出すことは

不可能な状態になっているのだ。


「まずはクロエが先発しアンバル砦を襲え!帝国騎士団を排除する。成功ののち

 わたしが全部隊を率いて州都アバンツオを襲撃し、州全体を把握する!!」


その夜

魔王リコの部屋を訪ねてくる者があった。

ノックの音

「どうぞ」

「理子?」「ミチル・・・」

部屋に入ると、いきなり土下座をするミチル

「理子!本当にごめん。あなたと本当は仲良くしたかったの。ウソじゃない。

 あのとき、理子に槍で突き刺されたとき、正直嬉しかったよ。あなたに殺される

 なら本望と思ったんだ」

「ミチル・・・」

「だから、帝国騎士団を追放されたし、この機会にあなたと・・・」

泣き崩れるミチルをそっと抱き寄せ、「いいよ。もう済んだことよ。気にしないで」

「でも・・・・でも・・・・・・一度はあなたを殺そうとしたんだよ」

「しょうがないじゃん、あれはそういう状況になったからだし、終わったことだよ」

「・・・リコ・・・あなたは優しすぎる・・・その優しさに付け込んだ私が悪い」

「いいよいいってこと。終わったことを何時までも考えても仕方がないよ。ねっ!

 これからは私たちと一緒に頑張ろう!」

「ありがとうリコ。もうあなたを裏切るようなことは絶対しない!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そして出発の日。

「クロエ!生きて戻るんだ!キミは絶対的に強い!頼んだぞ!」

クロエは敬礼しつつ、「再び魔王さまの下へ戻ることをお誓いします!」

「よし!行ってこい!」

ブーランジュ砦を任されたチェンバレンも「では行ってまいります!」「頼む!」


ランブランズ砦に残ったリナ、ミチル、シャーロットは魔王リコから

「しばらくは部隊の強化に努めてくれ。州都へ攻め込むにはもっと強い部隊が必要。ミチルとシャーロットは州都の様子に詳しいと思う。二人には州都を攻める計画を

このメレイと共に考えて欲しい」

「解った。ではメレイさん頼みます」

「了解です!」





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