楽しいことは最後に取っておくのよ!

ミツルやミイナが斬殺されたころ。


右足を負傷したリナは魔王の間で痛みに耐えていた。

(なんで・・・なんでこんなことに・・・)

レカセの指示を受けたゴブリンが近寄って来た。

「いや!辞めて!来ないで!!」

だがゴブリンは、薬をその傷口に塗っているではないか・・・

(助けてくれるの?)


メイドのミリアが「魔王さまの指示です。こちらへ」と椅子に座らされた。

「どうするつもり?」

「魔王さまの指示をお待ちください」




横たわるレイナの前に仁王立ちの理子=魔王


「あなたはイジメに関わったわけではないけど、止めることもしなかった」

レイナの首根っこを捕まえて強引に立たせた理子

「ごめんなさい・・・私がイジメられるのが怖かった。

 理子がターゲットにされていれば私がイジメられることは無いと思ったの」

「でしょうね。誰もイジメられたくはない。誰かがいけにえになればいい

 そう思ってたよね」と言いつつ往復ビンタを食らわせる理子。


「止める勇気があればね、今こうしてあたしにビンタされることもないのにね」

「・・・ごめん理子・・・本当にごめんなさい」

「その勇気がなかったあなたも同罪よ!」

理子は大剣をレイナの心臓めがけて一突き。


ぐわっ・・・


レイナは目を見開いたまま死んだ。


「テレポーテーション!」


魔法陣に立つと


ウッ・・・



「おかえりなさいませ魔王さま」

「リナ?他のみんなは死んだよ。私が殺した」

「・・・そう・・・じゃあ、わたしもここで死ぬんだね」

「いや」

「えっ?」

「あなたには私の部下となってもらう」

リナは剣道部の主将であり全国大会でも上位に食い込む実力者。

そのリナを使わない理由はない。


「理子・・・どうしてこんなことを?」

「こんなこと?それを言う?あなたこそ、どうしてここにいるか解る?」

「・・・」

「私がずっといじめられていたこと知ってたよね?」

「知ってた。でも止められなかったの」

「なんで?」

「だってあの子たちに逆らったら・・・知ってるでしょ?

 あいつら担任も教頭とかと裏で繋がってたし、あたしも剣道大会出られない!って

 脅されたことが有るのよ」

「知ってるわ」

「あんたは剣道の実力は全国レベルだけど、本当の剣士って実力だけじゃない。

 その精神も備わっていないとダメなんでしょ?悪いけどあなたは精神的なものが

 欠けている。だから優勝には手が届かないのよ」

理子に本当のことを言われて・・・うな垂れるリナ。

「そう私に欠けているものはまさにそれよ。だから優勝することは出来ないんだ」

「解ってんじゃん。じゃああなた自身は何をすればいいと思うの?今ここで」

リナは顔を上げ、見下ろす理子の顔をじっと見つめながら言った。

「理子。今までのことを反省してる。あなたのことを・・・」と言いつつ泣いている



リナは立ち上がり、

「あなたの言うことは何でも聞く。それが私の理子への償いだと思ってくれれば」

「そう、よく言ったね。じゃああたしの言うことは何でも聞いてくれるのね」

「うん」


理子とリナは抱き合って泣き続けていた・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そのころ

「まだ帰ってこないのか・・・」

「そうだね、出発してからどの位経つ?」

「もう半日以上はたつかな?」

「こんなに待って帰ってこないって、もしかしてみんな・・・」

「待て!それ以上言うな!」

「だって」

帰ってこないのか?それとも脱出できたのか?死んでしまったのか?

残ったメンバーだけでは推測するしかない。

「でもあいつら、そんな仲間重いってわけでもない気がすっけどな」

「・・・わからないなぁ・・・」


残ったクラスメイトは10人ほど。

「行ってみる?」

「うーん、じゃあ行ってみるか?」

騎士のアオトとユウタ、魔法士のサヤカ、弓士はリュウト、回復術士としてユウコが

選ばれた「状況が解ったらスマホ使えよ。無理なら戻って来い」

「解った」

「リーダーはアオト、お前頼む」





例の分岐点に着いた。

先導役のダークエルフは「どちらに進むか、お前たちが決めろ」

「左へ行く」「解った。では行ってこい!」


暗闇の中を進むと、

目の前が広い空間になっている。「ここは?」

数か所の松明でやや明るくはなっているのだが、それでも暗闇である事には違いない


「あそこに人?みたいなのがいるよ」

「あんまり近づくなよ」


グルルルルルルルルルルルルルルルルルルル


出てきたのはグールとグーラー。

余りに醜いその姿にメンバーが恐怖の表情になっているけれど・・・


「じゃあ俺たちが行くから援護してくれ!」

「解った!」

アオトとユウタが二人と戦っている。ユウコは最後尾でパワーを送っている。

魔法士のサヤカも魔法攻撃、このグールたちは松明の明かりを避けて動いている。

「ならば・・・これしかないわね。スターライト!!」

これは効果絶大。たちまちグールとグーラーはその動きを止めてしまった。


「いまだ!」

アオトとユウタが2体のグールをその剣で真っ二つに切断した。

「やったな!」ハイタッチで喜ぶ二人だったが・・・


その後ろから


うううううう・・・・・・

ああああああああああああ・・・・・・

ぎゅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ


ゾンビが群れを成して出現した!その数20体以上!!

「うわっ!今度はゾンビかよ!それに、ずいぶん居るなぁ・・・」

「ああ、でも斃さないと先へ進めないぞ!」

「帰れないの・・・・」

「大丈夫だサヤカ!帰ろう!学校へ!」



ズバッ!

グサッ!

バサッ!

アオトとユウタが斬りまくり殺しても斃しても、次から次へと新手のゾンビが

洞窟の奥からまるで、湧いて出てくるかのようだ。


リュウトも弓を次々に発射し斃し、

サヤカは「まったく次々と!ライトニングアロー!!」この魔法攻撃で

一気にゾンビの群れを葬り去った。


「ハードだったな・・・」

「こんなにゾンビが出てくるとは・・・」


うううううう・・・・・・

まだ生き残っていたゾンビを剣で切り裂き斃した。


「少し休もう」



がぶっ!!!!

「痛い!」「ユウコ!」

ううううあああああああああああ・・・・・・・・ああああ

「まだ残っていやがったのか!」ユウタが最後の一体を殺して・・・

そのゾンビに噛まれたユウコがゾンビ化してしまったのだ!!!


「うううううう」

「ああああああああああ」


ゾンビ化したユウコは隣で休んでいたサヤカに襲い掛かった!

「ユウコ!やめろ!やめるんだ!」と言ったところでゾンビとなってしまった

ユウコには通じない。「やだ!やだやだ!!やめてユウコ!」


そのユウコが噛みつこうとしたその刹那。

「ユウコ!すまん!」

頭を剣で一突き・・・


バタッ・・・


「ユウコ・・・・・すまない!」

仰向けに倒れたユウコ。

「ごめんねユウコ、成仏してね・・・」


「ここは危険だ!戻るか?進むか?」

「ねぇ戻ろうよ」

「ダメだ進む!」

「あいつに謝らないとダメなんだ、学校へは戻れないんだよ!」

「いや!わたし戻る!」とサヤカが戻って行った。


ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!

戻って行ったサヤカの絶叫が聞こえた。


駆けつけると。

その体を真っ二つにされ惨たらしい死体となったサヤカが。

サヤカの死体にはグールがいつの間にか現れ、死体を貪り食おうとしていた。

「くそ!サヤカ・・・」

グールを片付けたアオトとユウタ。


「サヤカ・・・すまん!」

身に着けていたネックレスを外したアオト。

「これは形見だ。彼女の生きた証だ。持ち帰ろう」


ユウコがつけていたブレスレットを外し、これも「持って行こう」

「そうだなあいつに渡そう」ユウコと付き合っていたレオに手渡すつもりだったが。



「よし!二人の為にも進もう!そして学校へ行こう!」

「解った!絶対に帰ろうぜ」


残ったアオト、ユウタ、リュウトだったが・・・









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