夢のおわり

「リコさま」

王宮の中の部屋で机に突っ伏して昼寝中のリコ


んんん・・・・どなた?


「私です」

「あ、女王さま。どうされました?」

「この国も安定してきましたし、そろそろ私も退位して

 私の二人の子供に跡を継がせたいと思うのですが」

「女王さま、まだまだ退位というご年齢ではないと思いますが」


シャリエ女王は遠くを見るような眼をして

「いろいろな事が、あっという間に私の目の前を通り過ごした気がします。

 私はつかれました。早いうちに若い力が必要であろうと思うのです」


「お気持ちはわかります。若い二人に任せるのもいいでしょう。

 でもまだ経験不足では?厳しい判断が二人に下せると思いますか?」

「その時は私が判断を下せるようにしたい。私は二人を補佐する立場に・・・」

「なるほど、不足分はご自分でカバーすると。そういうことですね」


若く美しい女王が退位する。

彼女自身が決めたことであり、リコのような部外者が指図するようなものでもない

ではあるけれど・・・


「解りました。では女王さまは退位することは誰かに話されましたか?」

「いえ、リコさまが初めてです」

「では、いつ退位の話を公表されますか?」

「しかるべき時期に。二人の子供にはすでに話しています」

「そうですか。マリレーヌさまとジョルダンさま、どちらが?」

「私はマリレーヌにやらせたい。ジョルダンには王国軍最高司令官をやらせます」

「解りました。ではしかるべき時期にではなく、はっきりとさせるべきです

 退位にかかわる煩雑な事務方の仕事もあるはずですから」

「そうですね、では1か月後はどうでしょうか」


一か月後。

【マルティーヌ・シャリエ女王が退位。後継はマリレーヌ・シャリエ王女に!】

全国の街や集落にその話はあっという間に広がった。


王宮のバルコニーに立つ二人。

後ろに前国王であるマルティーヌが見守る中

マルティーヌ・シャリエ女王の美貌をそのまま受け継いだ、マリレーヌ王女。

まだ若干18歳だが、その美貌とずば抜けて高い見識は年相応には見えない。

「お母さまの意思を受け継ぎ、この国と国民を守っていきます!お任せあれ」

「ジョルダンには軍最高司令官として国の安全を確保する崇高な役目を

 頼みます」

「はい。姉上とともに、この美しい国を守ることを誓います!」

王宮前を埋め尽くした大群衆の前でも、何一つひるむことなく誓いの言葉を

述べるのだった。


国王の引継ぎ事務も無事終わり、ようやく平穏な日々がやって来た。



「リコさま」




「福田!いつまで寝てんだ!」

んんん・・・福田?それは私の姓名だが・・・

それを知ってるのは王宮にはいないはず・・・・


「理子・・・起きなよ・・・」と体をゆすられる。


うっすら目を開けると、隣にいるのはリナ・マツモト元帥

「あ、元帥殿!」

「はぁ?げんすい?なにそれ・・・寝ぼけてんの理子」


寝ぼけているのか、私は。


周囲から笑い声が聞こえる


顔を上げると・・・そこは

「やっと起きたか?福田。あとで職員室へ来なさい」


周りを見ると・・・・


やや!ここはあの学校?

隣の席にいるのは確かに・・・もしかして元に戻った?

「今日は何日?」

「やだ、2024年10月3日よ」


10月3日?

「あなたはだれ?」

「ちょっとやめてよ、あたしよ松本梨那!もう忘れたの?」


家のPC立ち上げたのはたしか、ゲーム初めて1か月後の10月1日。

わずか2日ってこと?

「あんたさぁ、今日朝、ふらふらしながら学校来たんだよ?覚えてる?」

「覚えていません」

「昨日もよ」

「・・・・・?????」


じゃああたしは元の世界に戻ってきたってことだ!

「やったぁ!!!!」

「うるさい!職員室で話は聞くから」

「すみません・・・」


あの世界では10年くらいいた感じなのに。

わずか2日の出来事だったんだ・・・


あの世界で死んでいったクラスメイトはみんな生きている。

あのミチルは?


「ミチルは?」

「ああ、今日は休みみたいよ。風邪ひいたみたい」

「そう」


放課後、職員室でみっちり怒られて、帰り道。


「理子!」

「梨那・・・」

「帰ろうよ」

「うん」


自転車を押しながら二人並んで帰る。

今までと変わらない光景。


「ねぇわたし、いじめ受けてたの知ってるよね」

「知ってる」

「その中心にいたのはミチルだってのも」

「知ってるよ。それをさ誰かが先生に行ったらしいんだ。

 それでミチルと取り巻きはしばらく停学になってたけどね」

「そうだったの」

「いまは結構静かだよ。カースト最上位は変わらないけどさ」

「ふぅ~~~ん」


「じゃあね」

「また明日」


またあのゲームやろうかなぁ・・・

いや辞めておこう。


またあの世界に飛ばされてはたまらないし。



【アンインストールに成功しました】

これでよし。


ゲーム無くてもね。他にやることあるし。




あの体験を小説にでもしようかな・・・



全編完結

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勇者よ!英雄よ!私の前にひれ伏すのだ! 利根川藤代 @83012086

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