第38話
どうやら、あのまま少し眠っていたらしい。
何時だろうと体を起こそうとすると、なにやら違和感を覚えた。
お腹にまとわりついている、しなやかなで筋肉質な腕。
背中に感じる温もり。
かなり近くから呼吸音が聞こえる。
後ろを見るまでもなく察してしまった。
神谷が私に抱きついて寝ている!
「神谷、神谷。……おい、神ゃうぶっ」
お腹にあった手が私の口をおおった。おかげで変な声がでた。
「宮さん、もう寝る時間です。静かにしてください」
「もごもごもご」
私は抗議するが、残念ながら言葉にはなっていなかった。
「くふふふ、それ可愛いですね。喋れてない」
おちょくられているのだけは伝わった。
神谷は口から手を離すと、定位置のお腹へ戻る。
神谷よ、そこは定位置ではないのだよ。
「てか、なんでここで寝てるんだよっ」
じたばたしてみるが、さっきよりもがっちりホールドされている。
「なんでって、ベッドここしかないから。あれ、宮さん名探偵なのに鈍いですねー。
かわいいですね〜気を許すとまったく警戒しないし、猫みたい」
神谷の声が耳元数センチに迫って、私はビクッと首を縮めた。
神谷はかまわず首元をスンスンと嗅いで
「いい匂〜い。あ、猫って気を許したらお腹見せるって言うし、宮さんも見せてくれたりするのかな」
とか訳の分からんことを口走っていた。
つか、臭っ!酒臭っ!!
なんだ、こいつ酔ってんのか!?
絶対風呂上がりにビール飲んでるな。酔ったらこんななるのか!
比較的紳士だと思ってたのに。
「ねぇ、こっちむいてくれないんですか?」
ほっぺをつつくな。
「ねーーー。みやーーみやーー」
こら!お腹をまさぐるな!!
私と神谷の攻防はしばらく続いたが、眠気に負けた神谷はゆっくりと失速していき
「……僕、大事にするから逃げないで」
そうぽつりと言い残して眠り込んでしまった。
私も諦めて、目を閉じる。
「おやすみ、神谷」
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