第4話

「まあそう怯える必要なんてない。私は君についてなんにも知らないも同然だから」




女性はずっと立ち上がって一枚の紙を差し出した。それは、雨で歪んでしまった名刺だった。





「大分濡れてますね」



「走ってる途中に水たまりに落としたからな。拾えるだけ拾ったけど、多分まだそこら辺に散らばってる」



「なるほど、どおりで」




女性の名前は篠原 宮というらしい、そして探偵事務所に務めていることがわかった。




「そろそろ帰らないと所長に怒られる。

何かあったらそこに連絡して、結構ぼったくりだけどな」




それだけ言うと、来た時と同じようなやる気のない駆け足で去っていった。


少し離れたところで、息が切れたのか諦めて歩いているのが面白かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る