第3話
「さあ、知らないよ。今日が初めましてだ」
女性は澄ました顔で言った。
「だったらなんで」
「君を見てたら誰でも分かる」
「えぇ?」
いやいやそんなはずは無い。まさか今の状況を名札にして胸元に引っ掛けてたりはしないし。
僕が頭の上にはてなマークを沢山浮かべていると、女性は僕のポケットを指さした。
「だいたいこの時間にスーツ姿で、それもカバンも持たず、財布とスマホをポケットに入れて、うろうろしてるなんてお昼ご飯を食べに出てきたサラリーマンですと言ってるようなものだ。しかもその胸元のピンはあそこの会社のロゴだろ?」
「確かに、言われればそうですね。
急に言い当てられたからびっくりしましたよ僕」
「まあ、実はちょっと驚いたりしないかなあと思って言ってみたからな」
子供みたいに、けたけた笑う無邪気さに僕も釣られて笑う。
小柄で、てるてる坊主のような白いワンピースを着た彼女は、雨で前髪が滴っているのも相まってなんだか現実離れしていた。
「でもなんでわざわざ」
「雨にずぶ濡れにされた腹いせだ。悪かったな驚かして」
これだけの洞察力を披露したその理由が雨にうたれたせいとは、ちぐはぐな感じがして可笑しい。
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