第41話
常習的な仕事の速さに思えたが、そんなことをこの状況で聞くのも野暮だ。
ご機嫌な神谷は、怖いくらいににこにこしながらショッピングモールを歩いている。
「宮さんとデートなんて夢みたいです」
彼は鎖の代わりの結束バンドの存在を忘れているのだろうか。それとも普段のデートでも神谷は彼女を結束バンドで縛るのか。
推測にとどめておこう。怖いから。
「宮さんは覚えてるかわからないですけど、だいぶ前、休みの日に誘っても僕とは遊んでくれなかったし」
根に持ってたのか。
「だって忙しいんだ」
「探偵事務所、毎週水曜日が定休日と聞きました」
じっとりした目で私を見る。言いたいことが全部顔に書いてある。
「………ああ、悪かったよ断って。私は誰に誘われたとしても行かないんだよ、神谷だから断ったんじゃない」
「ふーーん」
「なんだよ、拗ねてるのか? いいじゃん、こうやって念願叶ってデート出来てるんだから」
「なんか宮さんに嫌々付き合ってもらってるみたいで、不服なんですけど」
神谷がめちゃくちゃ不貞腐れてた。
何やら色々地雷を踏んだ気がするのは気のせいではないらしい。
というか、嫌々付き合ってもらってるのが不服って、攫って鎖に繋いでるやつがよく言えたもんだ。
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