第40話

神谷が昨日、洗濯してくれた服に着替えた。ワンピースだったので足枷があっても着替えられる。



「神谷〜。この足枷とらないと外出れないぞ」


「ハイハイ、外しますよ」



神谷はしゃがんで鍵を足枷に差し込んだ。

少しこそばゆい。



「これで自由になっちゃいますね」


「これで逃げられるな」



そう逃げる気もなかったが私はニヤリと笑ってみせた。



「まあ、そうはさせませんけどね」



神谷は私の手を握り、指と指を絡めてきた。



恋人繋ぎ。



そして、手首には結束バンドが巻き付けられていた。手際が良すぎて反応が遅れた。



「なるほど、これじゃあ逃げれないな。試着も出来ない」


「大丈夫です。着なくてもサイズは僕が分かりますから」


「なんだそれ、怖っ」


「じゃあ行きましょうか」



眩しすぎる笑顔の神谷に、私は目を細めた。


さすがに結束バンドは目立つんじゃないかと思ったが


繋いだ手を神谷のポケットに入れられたおかげで、なんの違和感もない、ただのイチャイチャカップルの絵面が完成した。

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