第39話

翌朝、目が覚めると隣はもぬけの殻だった。眠い目を擦ってリビングに行くと



「おはようございます。よく眠れました?」



と爽やかに神谷が出迎えられた。

朝食まで用意されている。フレンチトーストらしい。



「昨日はよくも……」



からかってくれたな、と続けよう思ったけれど、朝食に免じて



「寝室は別々にするという選択肢はあるか?」


と聞くと


「ないです」とだけ返ってきた。




なるほど、即答だな。




「ちなみに昨日の夜のことは覚えてるのか?」


「ええ。可愛かったですよ、うぶで」



遊ばれている。完全に弄ばれている。酔ってるなら仕方ないかとも思ったが、愉快犯じゃないか。



「僕、酔わないんですよね〜」



こやつ、案外食えないやつかもしない。



「そんなことはいいじゃないですか。先にご飯食べましょう。買物楽しみですね」




私はぷいっとそっぽ向いて、席に着く。

私だって人間なのだ、からかわれていい気はしない。でも、作ってくれたものには罪は無い。


フレンチトーストは頂く。




「……いただきます」


「どうぞ召し上がれ」



神谷にじっと見つめられながら、ひと口食べる。それは、ほっぺが落ちるくらいめちゃくちゃ美味しかった。



ふた口食べる。



もう止まらない。



次々、頬張っていく。神谷がやわらかく笑って「喉つめちゃいますよ」と牛乳を注いでくれた。



甘いフレンチトーストと牛乳はすごく合う。



「おいしいーー」



半分食べ終わるころには、昨日のことなどどうでも良くなっていた。



神谷はけらけら笑っていた。

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