第15話

「まるで小説の舞台のような演出だな。足枷なんて」



できればもっと過酷な状況でも良かったのだけれど。



くつくつと喉を震わせて笑う。最近はつまんない依頼ばっかで退屈していたんだ。




「どんな依頼より魅力的だね。ワクワクしてしまうよ」




普通に生きてたら滅多にこんな状況に陥ることはないだろう。



何ヶ月ぶりだろう、こんなに心が踊るのは。



しかし今回の監獄は、やけにさやしく私をとらえた。




「僕から逃げられるはずないでしょ?」




どういうわけか、神谷は泣きそうな笑顔で答える。



「いやこう見えて、脱出の達人だと自負してるんだよ」



呆れて何も言えないと、大きなため息が聞こえた。



「……それ、ただの自負じゃないですか」



「経験と実績があるんだよ」



私はニヤリと笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る