Detective 3

第30話

*現在*






目を開けると、向かいに神谷が座っていた。




私が寝ていると勘違いしたのだろう、頬杖をついたまま穏やかに「おはよう」と言ってくる。





神谷は私が誘拐されたというのに落ち着きすぎていると言っていたが、私からすれば誘拐した人がこんなに凪いでいることの方が珍しい。




というか、そんな人を見たことがない。




たいていは鼻息が荒いか、興奮している。


とまあ、それ一旦置いておいて。




ダイニングテーブルで長考した結果、私はとりあえずここまでの状況を鑑みて、ひとつの判断をくだした。




「今のところ、私は外に出られそうにない」




こんなに温厚な犯人に鎖で繋がれていても、いまいちやる気が出ない。




そもそも危機感とか警戒心とか恐怖心とか、そういう脱出するために必要な精神状態が、不思議なことに神谷を前にすると根絶やしにされてしまう。




ある意味、一番危ないと言えばそうなのだけれど。

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