第55話
今日は一時間早く仕事が終わり、帰りにケーキを買ってマンションへと戻った僕。
宮さんが喜んでくれる姿を想像しながら、玄関扉を開けた。
………お出迎えは、ないのか。
少しの落胆と共に「ただいま〜」と部屋の中へ入った。
猫のミヤがにゃーと鳴き、さ迷っている。いつも宮さんとベッタリ一緒のミヤがおかしい。
そもそも人のいる気配がしない。
かれこれ数週間、いつ帰っても宮さんはいた。
ときに寝落ちして出迎えてくれないこともあったがそのときでさえ、言い表すのが難しいけれど
体温が空気に混ざりあったような人の気配はあった。
「………嘘だろ」
目を背けたくなるような、決定的な証拠がリビングにあった。
足枷が外れたまま投げ出されている。
触れると冷たい。外されてからかなり時間が経っている。タッチの差ではないことは確かだ。
「油断してた……っ」
拳を握りしめる。ケーキの箱がぐしゃりと歪んだ。
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