第24話

事務所は僕の会社の近くで、ひっそり佇む建物の2階にあった。




宮さんを落とさないように一段一段ふみしめて登っていく。

いくら宮さんが軽いとはいえ、抱えたままの階段はちょっと怖い。




「揺れで傷口が痛いかもしれないですけど、ちょっと我慢してくださいね」


「全然、気にするな」





階段を登りきるよりも早く、扉が勢いよく開いた。

中から女の人が飛び出してきて、こちらに突撃しそうな勢いだった。



「みや!みや!!大丈夫!?!? 返事して!!!ねえ!!」



あまりの剣幕に僕は階段の1番上で突っ立つはめなった。



宮さんはといえば、眉に皺を寄せて片手をヒラヒラさせ



「ちょ、うるさいよ。羽鳥さん、大袈裟だから」



「大袈裟って……! もう!さあ、早く入って」



「は、はい」




宮さんをソファーの上に降ろすと、手際よく羽鳥さんが救急セットから包帯やら消毒やら一式だしてきた。



羽鳥さんは急にふりかえって


「ちょっとあなた、後ろ向いててちょうだい」


ときつく言った。




あ、そうか。お腹手当するんだ。




「す、すいません」




僕は恥ずかしくなって、後ろを向いて手で顔をおおった。

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