第25話
後ろでガチャガチャ器具を扱う音が聞こえる。
「優しくしてよ羽鳥さん」と宮さん。
「我慢しなさい」と羽鳥さん。
「もう血止まってるから大丈夫っていったろ?」
「跡残ったらどうすんのよ、無茶ばっかりして。もう、何回あんたに寿命縮められたか」
「………それは、うん。ごめん」
しかし、宮さんは普段と変わらないトーンで話しているけれど、相当痛いはずだ。
いや、今は羽鳥さんに怒られてしゅんとしているけれども。
「犯人特定したのまではいいけどね、単身乗り込んじゃダメだって所長にも言われてたでしょ!
宮は推理担当、裏は私たちがとる。その約束いつになったら守ってくれるのよ………もう」
外見は同い年のように見える二人だけれど、会話の内容は母と子のようで、背を向けているのをいいことに笑みがこぼれる。
僕もさっきまでの緊張から解かれ、今になってどっと疲れた。
「………自分で確かめたかったんだ」
宮さんがぽつりと言った。
「推理なんて所詮、机上の空論だ。自分の目で確かめてはじめて疑える、それを人任せになんて出来ない」
一呼吸置いてから、微かに空気が震えるくらいの声で宮さんは呟いた。
────それを許したら、私のしたことは全部間違いになる。
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