第28話
僕は羽鳥さんに入れてもらったコーヒーをいただいて、所長の帰りを待っていた。
なぜ待っているのかも分からない。
帰ろうとすると羽鳥さんに引き止められるので、手持ち無沙汰な僕はコーヒーをすするくらいしかすることがなかった。
羽鳥さんはそこまでお喋りでは無いらしく
隣で僕と同じようにコーヒーを嗜んでいた。沈黙は気にならないタイプみたいだ。
ちなみに僕は気になる。そわそわと所在なさげにコーヒーを飲んでやり過ごしているくらいには。
顔も知らぬ所長の帰りを、こんなにも待ち遠しく思うなんて………。
だから、事務所の扉が開いた時には「待ってました!」と言わんばかりに立ち上がって挨拶を交わした。
所長は想像していた通りの精悍な出で立ちのおじさんで、白髪混じりの頭髪には苦労がうかがえる。
「宮を助けてくありがとう」と所長は僕に頭を下げた。
助けられていたなら、彼女は今頃無傷なはずだ。僕はただここに運んだだけだと説明したが、所長は何度もお礼を重ねた。
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