第32話
「………はぁ。なんか、我慢強いよなあ神谷って」
「もちろん聞けるのであれば、僕は宮さんの口から聞きたいですが」
「一生口を割らない可能性だってあるのに?」
「それでもいいですよ」
神谷はおもむろに立ち上がった。
「言いたくないことは言わなくていいです」
テーブルを手でなぞりながら、こちらに回り込んでくる。
その仕草があまりに優雅で、ただ目で追うことしか出来ずにいると
神谷は屈んで私の手をとり、大きく暖かい手のひらでぎゅっと包み込んだ。そして、包んだ手を神谷の胸へと誘導される。
規則的で、それでいて少し脈の早い鼓動が伝わってきた。
「もし、宮さんが一生だまんまり決め込んだとしても、僕にとっては今がすべて。問題ありません」
そうきっぱり言い切った神谷は、どこかおかしい気がする。
私は神谷に差し出して喜んでもらえるものなどひとつも持ち合わせていない、この関係にいったい神谷はなんの利益を見出しているのか皆目見当もつかなかった。
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