第17話
どこからか、ミャーと猫の声が聞こえてきた。
ああもうこんな時間かと神谷がつぶやく。
「ミヤご飯の時間だね。おいで」
神谷が振り返って声をかけると奥から三毛猫が現れた。今までどこに隠れていたのか、まったく気づかなかった。
寝起きなのか大きな欠伸をして神谷の顔をじっと見つめる。
そして流れるように私を見ると、こっちに向かって歩いて来た。
警戒心は無いらしく、膝の上にぴょんと飛び乗って丸くなった。まだ寝たいのか。
暖かい体温を感じながら、神谷の方を見る。
「猫にミヤって名前つけてたのか」
「たまたまですよ」
「わざとだったら怖い」
私は猫を抱きかかえ立ち上がった。
異様な状況ではあるが、どこか居心地の良ささえ感じるこの場所。
相手が神谷だったからなのか、それとも私が場数を踏んできたせいだろうか。
普段は事務所で安楽椅子探偵をしているが、危ない仕事が舞い込むと途端に好奇心が抑えられなくなる。
誰もが恐怖をいだくほど強く、私は真相を追い求めた。
母を養うためにこの仕事をしているのか、スリルを求めて仕事をしているのか時々分からなくなる。
しかし、ここにとどまっては居られない。
次の仕事もあるし、所長に一言も残さず出てきたのだから、そこらじゅうを探し回っていたら可哀想だ。
それに、ここは居心地がよすぎる気がする。
「そろそろ出るか」
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