第22話 人間や動物のなどの生き物
人間や動物のなどの生き物、それに生き物でない無機物も原子より小さい最小単位の物質、電子などを代表とした素粒子と言われるもので構成されている。
その素粒子の中で生物にだけ幽子が存在する。この幽子は現代量子学でも仮説としては存在する。これが魂(たましい)の元だという学者もいる。それはあの世または常世と呼ばれる別の次元、科学的には四次元以上の高次元と行き来が可能だと考えられているからだ。
高次元とは宗教的には天国や地獄をはじめとする六道界に該当する。宗教どころか現実に常世は実際に存在していただけど……。
陰陽師たちは六道からやってくる瘴気の中から、幽子だけでなく対となる反幽子も見つけてしまった。
幽子と反幽子の関係は、今風の科学でいう所の物質と反物質との関係に酷似している。物質と反物質が衝突すれば「対消滅」が起こり、衝突したすべての質量がアインシュタインの公式E=mC²によりエネルギーに変換される。
1グラムの物質と反物質の対消滅から発生するエネルギー量は九〇兆ジュール、広島に落ちた原発のウラン量は64キログラムで五五兆ジュールと計算されているから、1グラムと64キログラムを比較してどれぐらい膨大なエネルギー効率か理解できると思う。
しかし、この反物質は宇宙誕生のビックバンとともに消滅して、宇宙拡張のエネルギーとなり、現在では理論的には仮説上の存在である。
これと同じように、生命誕生とともに幽子と反幽子が生まれ、生まれたと同時に一部の幽子を残して「対消滅」によって反幽子は膨大な生体エネルギーに変換される。生きるということはこの変換された生体エネルギーを消費するというこのなのだ。
そして、体内から生体エネルギー枯渇した時点で人は死を迎え、肉体に残った幽子も他の次元へと移動して肉体も消滅する。だから、現世には反幽子の存在が確認されることはない。
そのはずだった現世の理が、陰陽師たちが反幽子を発見したために、歪め始めた。
陰陽道次元転移術より現世と常世を繋ぎ、反幽子を呼び出し、動物や人間に反幽子を体内に注ぐ実験が繰り返された。
死者は体内に残されたの幽子と注がれた反幽子の対消滅により生体エネルギーを得て、生きる屍キョンシーになり、生きた人間は体内の豊富な幽子とそれと同等の反幽子の対消滅によりさらに多くに生体エネルギーを得て、キョンシーより強力で狂暴な自我の無い鬼人となる。
さっき戦った感じだと、こいつらは修羅道にいた夜叉や阿修羅それに羅刹の鬼神に匹敵する強さだった。こいつらはその生体エネルギーの暴走を抑え固定するすために、脳に隷属の呪術が編まれた人型の呪符(式符)を仕込んでいるのだ。
やつらの弱点はこの脳に仕組まれた式符を破壊するのみ。
ちなみに、京都府立総合病院で生まれたキョンシーは、最近発生した京都を中心とした濃い瘴気により偶然キョンシーになったもので、式符は見られなかった。俺たちが野良キョンシーと呼んでいたものだ。
俺たちは対消滅によって発生した生体エネルギーの塊を気配で感じることができるため、弱点を突くことができる。
俺は知っている内容を輝夜に話し終えた。
「そういうわけで。生きているように見えたサバゲーコスプレ野郎たちも式符を破壊したんで、生体エネルギーが霧散して塵芥(ちりあくた)になったんだ」
「うん~、なんとなく理解しました?」
なぜか疑問形で返事をされたが、俺の理解はこの程度だ。一三〇〇年前の陰陽師たちが瘴気の中身を解明し、陰陽術に取り入れ自分たちの権力のために利用した。一言で言えばこれだけなのだが、今はそんなことより、新たな謎が重要だ。
「で、三辰と一緒にあったこのご神体なんだけど……?」
「それは豊雲ですね。三辰が載っていたので取り上げることもできず、三辰と一緒に宇良神社で祀っていました」
そんな話を聞きながら、豊雲と呼ばれた一辺が四〇センチほどのトライアングルみたいな物を拾い上げた。
「素材はただの青銅か。ただし、造られた時代は相当古いものだな」
「豊雲の謂れについては父がよく知っていると思います。昔、一度だけ父と地下本殿に入った時、祭壇のご神体について聞いたことがあるんです。
その時はまだ時期じゃないって。このご神体の本当の持ち主が現れた時、昔から口伝で伝えられている話をしてやろう。でも輝夜は本当は知らないままのほうが幸せかもしれないなって厳しい顔をしてたから、それ以来近づくこともしなかったです」
「そうだよ!!輝夜のお父さんが心配だ!! 八咫烏の目的ってこのご神体の可能性が高い!!」
俺の閃きに輝夜の顔が不安で歪む。
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