第28話 高山が人だった時代は戦国時代
高山が人だった時代は戦国時代、名のある武将の一人だった。
しかし、力を求めたため名を捨て、八咫烏に入信し高山となり皇室に仇なす有象無象を蹴散らし、その残虐さで槍夜叉と恐れらたのだが、彩夏の動きをまったくとらえることは出来なかった。
本人の意思に関係なく、穂先を反発するように避ける動きはまるで誰かに操られるているような動き。彩夏が唱えた術式のとおり操り人形の舞踏そのものだ。
高山必殺の三連刺突から大車輪そして石突、フェイントを交えたあらゆる攻撃を避けられた高山は、一度大きく後方に跳んで彩夏と距離をとった。
「この程度で息が切れるとか笑える!! そんでもって掠(かす)りもしないとか?」
あれだけ奇怪な動きでも相変わらず扇子で口元を隠して挑発する彩夏。そう言いながらも着ていたジャケットのあちこちに創傷が出来ている。
彩夏の奇怪な動きはたたら神の加護アンチグラビティによるものだ。それでも、創傷は高山が動きに慣れつつあることを示している。
「うぬぬぬっ……」
挑発されて唸り声をあげるが、彩夏の動きがどんな加護の作用で起こっているかわからない、まるで暖簾に腕押しの相手に攻略方法が思い浮かばない高山は受けの構えに転じ、彩夏の出方を窺うことにした。カウンター狙いに変えたのだ。
それを見越したように彩夏は行動を起こす。
「バタフライダンス!!!!」
口元を隠していた二つの扇子を空に向かって投げ放った。二つの扇子は要の方をピタリと引っ付けちょうど蝶々のようにヒラヒラと高山のほうに飛んでいく。
「?!」
彩夏の行動の意味は高山にはわからない。ただ、自分の意思を持って飛ぶように扇子の動きは舞い踊りながら高山に向かっている。
油断なく槍を構えて扇子の動きを目で追う。優雅な動きは言葉を変えれば緩慢でいつでも叩き落とせそうだ。
何かを仕掛けられる前に先手をとる。高山は一歩目を踏み込むと縮地を使って蝶々と一気に距離を詰める。
「たあああっ!!」
気合とともに稲妻のような突きが蝶々に向かって突き出された。
しかし、確実に捉えたはずなのに、扇子はひらりと鋭い穂先を躱したのだ。信じられないことが起こって唖然とする高山。
驚愕が恐怖に変わる前に……、不安を払拭するように漂う扇子に向かって滅多刺しするのだが、扇子は穂先からするりするりと逃げるように舞い、掠(かす)りさえしない。
この扇子の舞は先ほどの穂先を躱す彩夏の動きと同じだと気が付いた。
(からくりがわからない)高山は得も言えぬ恐怖に囚われた。優雅と思われた扇子の舞は途端に不気味に感じられてる。
危険を感じた高山はフワフワと舞う陽炎から距離をとろうの後方に跳ぼうとした。
もう十分遊んだと言う表情の彩夏は、その動きに合わせたように高山の頭を指差し術名を叫んだ。
「蝶舞蜂刺(ちょうのようにまいはちのようにさす)!!」
それを合図に今まで逃げるように避けていた陽炎から仕込み刃が飛び出し、高山の頭に迫る。槍で払おうが、ステップやフェイントで避けようとしようが、ロックオンした相手を追撃してくるホーミングミサイルのように逃れることは出来ない。
しつこく纏わりついていた陽炎は、あらゆる技を出し尽くした高山をあざ笑うかのように、ふわりと天高く舞い上がると、常識を超えた加速で落ちてきて高山の額に深々と突き刺さっていた。
そのまま後方に倒れた高山。そして肉体は霧散して陽炎が突き刺さった式符だけが残った。
「さて、一丁上がり!! 柊の方は?(もうすぐ片が付くね) 次はじいさんの番ね!!」
陽炎をアンチグラビティで手元に戻すと胸元でクロスさせ、カッコつけて天祐に対峙する。
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