第42話 天皇をスメラミコトと読むこともあるが
天皇をスメラミコトと読むこともあるが、スメラミコトとはヘブライ語だと言われている。スメラはヘブライ語で「神の任命」とか「神を座する」と意味で、ミコトは「尊い人」またミカドには「天降る者」や「開拓者」とか「神のような存在」と云った意味がある。
一方日本語でもスメラをスメル「統べる」の意味でスメラミコトを統べ治める大王(オオキミ)。それ以外の意味にスメルを「澄める」という意味でスメラミコトを澄める(浄化する)大王という二つの意味を持たせていた。
スメルが「統べる」と「澄める」の意味を持つように、二つの意味を持つ日本語に「まつり」がある。古代まつりごととは「政ごと」と「祭りごと」の二つの意味があり、支配者には祭祀活動を担う宗教的役割と国を治める統治者的役割を求められていた。
前者をホスセリの系譜が「澄める祭祀王スメラミコト」として、後者を山幸彦以後の神武天皇の系譜が「統べる統治王スメラミコト」としてヤマト王朝の天皇となった。
この二人の天皇はその役割から統治王が表天皇、祭祀王はその役割から祓戸大神と言われ、禊払いの祭祀を執り行うことで神秘性が重要視され、奥の院に留まり表に出ることがなくなり裏天皇と呼称されるようになった。
そして、二人の天皇のバランスが崩れたのは比較的新しく日本に帰化したユダヤ民族の蘇我氏の台頭だった。
同族から表の天皇を排出し、平城京で栄華を極めた蘇我氏は、有史上は中大兄皇子と中臣鎌足(のちの藤原鎌足)により討ち取られ大化の改新で滅んだ。
しかし、古文書によると、この大化の改新もユダヤ十支族の対立から起こった権力争いだった。
国の滅びを迎え、聖地を追いだされたユダヤ民族が頑なに護ってきた処世術、自分たちは決して表に出ず裏から主君を支える。悪く言えば自分たちの傀儡を立て裏から支配する。
そんなユダヤ民族の禁を破った一族が蘇我氏だ。その目的は自ら支配者となり、日本を一神教(ユダヤ教)に強制改宗することを目的とした最後の派閥と言えた。
縄文時代から信仰する森羅万象に神が宿る自然崇拝、八百万の神々を信仰する日本の先住民と改宗し日本に帰依したユダヤ民族と一神教の蘇我氏の激しい争いは多大な犠牲を出した。聖戦により死を選ぶ蘇我氏は降伏することはなく、日本史上最大の宗教戦争となった。
そして、日本に融和していたハッティ人もこの戦闘の最前線に立ち、裏切りや罠などに合い一族の過半数は戦死し、最初に定住した備前の和気地域の山奥に引きこもり、表舞台から姿を消すことになった。
そして、裏天皇も戦地の浄化という戦後処理に奔走し、精魂尽き果ており、隠居を理由に始まりの地である丹後に身を引いた。
このことにより、山幸彦から続く政治を総べる表天皇派が、蘇我氏を滅ぼし反一神教の十支族の流れを酌む豪族を従え、表天皇に権力を集めた中央集権の覇道を進むことになった。
まず、表天皇が最初に手がけたのが、自らが天皇となる正当性を権威づける記紀(古事記と日本書紀)の編纂だ。自らの統治の正当性を明らかにするため、自らを現人神と名乗った。
そして、ここに至るまでの勢力争いを、旧約聖書と同じように、叙情詩のように、または予言書のように神々の闘争に喩えた。
イスラエル十支族は、旧約聖書に予言されている東の果ての日の最初に昇る島国で起こる救いを信じて、日本列島に何度もやってきた。同支族の場合、別支族の場合、先に日本に来て帰属している場合、後からやってくる場合、今でさえ実現不可能な平和的な多文化共生を、縄文時代の古代の日本は実践しており、あらゆる民族を受け入れてきた。
そんな縄文時代もイスラエル十支族を受け入れた後は、世界中の争いの根本的原因とも言える宗教戦争の時代を迎えた。比較的新しくやってきてユダヤ民族の習慣が残っているのが天津神、早い時期に日本に帰属し融合したユダヤ民族を国津神として、二つの神の系譜は時に争い、時に同盟し、日本独特のなんでも受け入れ自分たちの文化に纏めて昇華する。
大化の改新後、ついにユダヤ教の神も天皇(スメラミコト)として日本全体に受け入れられた。
天皇は現人神として君臨する。そこで邪魔になるのがホスセリ系譜の祭祀を司る裏天皇である。現人神と認めれるのは一人だけである。記紀にはホスセリ系譜の偉業は一切語られることはなかった。
天皇(スメラミコト)がこの世に現れた唯一神として神格化される偉業のあらましを持って記紀の物語の完成である。敗者は勝者を称えるだけ存在であり、協力者(ホスセリ系譜)は勝者の偉業を際立させるために存在自体を消された。これが勝者の偽造(つく)る歴史書じゃな。
ここまで話して、神主はみんなを見回している。その間は沈黙が支配した。みんなは考えを巡らしているようだ。俺も同じで、俺が知っている前世の状況と神主さんの話との間には、まだ埋まらない空白がある。
「古文書にはそれ以後のことは書かれていないの?」
彩夏が手を上げて、みんなの疑問を口にした。
「この古文書は、蘇我一族との政争で生き残った唯一の祓戸四神の最後の神のハヤサスラヒメが丹後に身を引かれた時に編纂を指示したものじゃ。
ハヤサスラヒメを知らん者もおりそうじゃから一応説明しておくと、最高の祭祀である大祓いの祝詞の中に出てくる四柱の神、人々の罪や穢れを川の早瀬にいるセオリツヒメが海や河口に流し、海の底に控えるハヤアキツヒメが流れてきた罪穢れを飲み干し、イブキドヌシが罪穢れが飲み干されたのを確認し、根の国に息吹を放ち、そして、最後に根の国で控えていたハヤサスラヒメが罪穢れをさらって失う。
祓戸四神によって罪穢れが祓われる様子を大祓い祝詞で表現している。この祓戸四神も記紀には一度も登場しない。そして、根の国に住まうハヤサスラヒメとスサノオの娘でオオクニヌシを助け、夫婦になったスセリヒメを同一神と考えた学者もいた。
これは古文書によれば、同一ではなく他の祓戸大神も含めて同じ系譜だということじゃ。
この宇良神社の祭神は浦島子=ホスセリ、大祓大神=ハヤサスラヒメ=スセリヒメ、これらのスセリの系譜がこの古文書を書き残したようじゃな。
この後はこれらの系譜がこの宇良神社に落ち伸びる記述になるんじゃ……。
まずは神武天皇の系譜の表天皇が差し向けた陰陽師たちに奇襲を掛けられたようじゃ……。先に襲われたのは備前の和気に在ったハッティ人の里。
温羅と呼ばれたハッティ人の里は、当代最強の陰陽師、吉備真備の計略に嵌って滅ぼされたようじゃ。
ハヤサスラヒメやその支援者の軍隊が丹後から駆け付けた時には、温羅の里は徹底的な蹂躙と略奪により瓦礫と死臭に覆われており、隕石との合金である温羅鋼(うらはがね)の錬成方法は歴史上から完全に失われた。
救済が間に合わなかったハヤサスラヒメは最強のカードを失い、その場で悲嘆にくれていたようだ。古文書からもその嘆きがリアルに伝わってくるくらいじゃ。しかし、そんなハヤサスラヒメにさらに酷な現実が突きつけられた。
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