第40話 豪族に付いたユダヤ十支族の争いの火種は

 豪族に付いたユダヤ十支族の争いの火種は、多神教と一神教の宗派の争い。そして、彼らの武力はその進んだ武器以外に、古代イスラエル王国の伝説の王ソロモンが所有していたとされる六芒星が彫られたソロモンの指輪をはじめとする魔術具や呪物の数々を使った魔術や呪術もあった。


 豪族たちに付き従うユダヤ魔術師たちは、それらの魔術具を使い風や水など自然界を操り大災害を引き起こし、死者を蘇らせ死霊軍隊を使役して都市や集落を攻め滅ぼす。


 ソロモンがソロモンの指輪で悪魔を使役し、自然界を意のままに操った。そんな秘術を日本列島に流れ着いた「失われた十支族」も引き継ぎ習得していたのだ。


 豪族に付き従うユダヤ十支族の呪術師たちがヤマト王朝統一の原動力となり、敵対勢力を無慈悲に蹂躙していく。


 ユダヤの呪術師が常世(地獄界)から瘴気を召喚する。瘴気の含まれる反幽子と呼ばれる素粒子が現世(この世)の生き物を構成する素粒子の幽子と衝突し、対消滅による得られる膨大な生体エネルギーを使い、自然を思いのまま操り、死んだ物を蘇らせ悪鬼外道のごとく使役する。


 彼らの常識外の呪術の原理はこんな所だそうだ。


(俺の知っている陰陽道の呪術体系とまったく同じ原理が古文書に書かれていた!? だとしたら、陰陽道は中国の道教が元ではなく、ソロモンが完成させた呪術を引き継いだユダヤ民族が迫害を逃れて日本列島に渡り、その呪術が日本の宗教観と融合した賜物だということ……。


 遣唐使で唐に渡った吉備真備が唐の仙人相手に無双した武勇伝にも納得がいくというものだ。なにせ、こっちが本家本元で中国の道教はユダヤ民族の通りすがりの教えだったのだから)


 俺は神主の話を聞いて、そんな感想を持ちながらも複雑な気持ちだった。俺が知っている陰陽道はユダヤ民族発祥だったからだ。

 だとしたら、温羅一族の超技術や秘伝もユダヤ民族の技術が元になっているのか? 気の遠くなる反復の繰り返しの中で習得したたたら神の加護「グラビティ・ベクトルコントロール」がユダヤ民族からの借り物だったとは……。

 

 だが、神主の話は思わぬ方向に流れていく。


 神主は言う。問題は宇良神社の浦島子やツクヨミそして大祓戸大神など記紀に登場してなんのエピソードも残さず消えていった神々だが、この神々こそ日本列島土着の豪族だったと……。


 まず、ツクヨミだが彼も元々日本土着の生まれであった。入植者であったスサノオとの戦いに破れ、スサノオの部族に領土と娘を奪われた。


 そのスサノオの部族も日本に帰化し、より古くからの帰化人の大国主命(オオクニヌシ)に、ツクヨミの娘との間に生まれた須勢理姫(スセリヒメ)を奪われ、娘のために領土の一部を割譲した。


 そのオオクニヌシが治める葦原中国(ハシハラノナカツクニ)をアマテラスの孫の瓊瓊杵尊(ニニギ)に国譲りをする。天孫降臨をしたニニギはコノハナサクヤヒメの間にホデリ(海幸彦)とホオリ(山幸彦)の表向きの話とは別に、蓬莱に行ったのは実は次男のホスセリだという話がある。


 そして、この神社の古文書にはホスセリの物語が書かれているという。


 ホスセリ(いやホスセリ族の統領)はユダヤ十支族と反目する勢力を味方にして勢いを得て、海幸彦(おそらく新たに日本にやってきた十支族(一神教)の海洋民族)と山幸彦(以前に渡来して日本の縄文文化に融合した十支族(多神教))の覇権争いに山幸彦側の援軍としてはせ参じた。


 お互いにユダヤの秘術を引き継ぐ陰陽師(この時代はまだ陰陽師や陰陽術という名称ではなかったが吉備真備の時代の陰陽師と同じ術師であり、混乱を避けるため陰陽師と表記する)が多い海幸彦の軍勢に、最初は山幸彦の軍勢を押していた。

 しかし、山幸彦側で参戦したホスセリ陣営の貢献は凄まじかった。ホスセリの軍勢は特殊な金属を鍛え上げた武具で陰陽師たちの陰陽術を蹴散らし、不死の死霊軍団を相手に一歩も退かず一騎当千の活躍で次々に武勲を上げていったらしい。


(特殊な金属を鍛えた武具だった? それは温羅鋼のような金属なのか? このホスセリについた民族は温羅一族の祖先なのでは……?)


 俺たちが前のめりなったのに、神主も気が付いたみたいだ。


「わしも君たちの話を娘から聞いて、ホスセリについた民族が温羅一族のルーツじゃないかと考えた。古文書には温羅とは書かれていないんじゃが……。古文書に書かれていたのはこの一族がどこから来たかじゃった……」


 ホスセリに援軍として付いた民族のルーツは旧約聖書にあるハッティ人だと書かれていたらしい。


 ハッティ人とは旧約聖書のハッティの地と称された土地の古代民族でヒッタイトに徐々に吸収され、同化した以降はヒッタイト人もハッティ人と称するようになった様だが、純粋なハッティ人を指しているようだ。


 ヒッタイト人は紀元前十六世紀ごろ現トルコ地方にヒッタイト王国を建国して民族で、鉄の精製技術を発展させ、それまでの青銅器文化ら鉄器文化へ時代を推し進めた民族だ。その鉄器も戦車を筆頭に武具に特化し、武力で現トルコからイスラエルやパレスチナを支配下に置いた。


 しかし、紀元前十二世紀ごろ滅亡し、国家機密だった鉄器製造技術が拡散することになった。旧約聖書では「名前以外不明の滅んだ民族」と書かれている所在不明だった純粋なハッティ人(ヘテ人)こそ日本に流れてきた民族だったと古文書には書かれている。


 このハッティ人は地母神を中心とする多神教だったこともあり、ユダヤ教とは反りが合わず、同じ多神教に迎合していた山幸彦に味方することになったようだ。


 ハッティ人の製鉄技術は、ふいごを使った溶鉱炉で溶かした鉄と隕石を混ぜ合わせて合金にして打ち鍛えた特殊な鋼の武具を造り上げたと古文書に記されている。


 この鋼の武具で海幸彦側の陰陽師らが操る人外の悪鬼魍魎に対抗し、ついには退けたと記されている。

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