第52話 分身の術?!」「いや、変化の術だろ」
「分身の術?!」「いや、変化の術だろ」
彩夏が怪訝な声に柊も答える。
「ふふふっ、それぞれがあての妖力によって強化された分身体どすねぇ」
玉藻の言葉から、どうやら、この九尾(人?)は電磁気力で強化された獣人さんということらしい。
電磁気力による身体強化だとすると俺たちと同じ引き合う力と反発しあう力を応用して戦うわけか?
「よっしゃーーー!! 一人二匹だ!! 楽勝だろ!!」
「うちらは無理!!」
「はーっ? なに弱気になってんの?」
「こんな格好で戦えってちゅうの?!」
不利な状況に気合を入れた俺に、NGを出す七星。後ろを振り向くと3人の女性のあられもない姿が……。確かに動くと色々見えそうで、この恰好じゃ戦えない。
そういえば、さっきの漆黒の炎で俺達の服は結構なダメージが入っている。俺もそうだったが、女性陣も放電のように暴れる漆黒の炎をすべて避けられるはずもなく、相当にエロい恰好になっている。
これは、戦うどころではないか……、いや、勝利のためには恥も外聞も投げ捨てて欲しいなどといったら、勝った後でどんな目に遭うか……。
「じゃあ、俺たちが前に立つんで、後衛のフォローと輝夜をよろしく!!」
何の力も持たない輝夜も服のあちこちが破れてそこから見えている白い肌は血がに滲んでいる。
こいつら絶対に許さん。俺は三辰を攻撃できるように構えた。しかし、玉藻たちは攻撃せずに俺たちを取り囲んでいく。
そして、包囲が完成すると、牙が生えて残忍そうな顔をした玉藻の分身たちは、シャーッと爪を伸ばし二尺以上の長さなっている。耳に高音の音が響き、爪の輪郭がぼやけているところを見ると、あの爪は鉄をも切り裂く高周波ブレードというものだろう。さすが電磁気力が原理なだけはある。
こうなったら俺たちも奥の手を出すしかない。遅ればせながら修羅道で習得した究極の陰陽道奥義。自分の寿命をベットして、理性を飛ばし身体能力を数段引き上げるバーサーカーモード。
「危ない!!」
自分でも気が付かないうちに体がこわばっていたみたいだ。彩夏の言葉に脊髄反射した。気配だけを頼りに上空に飛び上がっていた。
下を向くと、俺達のいた場所は取り囲んできた九尾の分身から伸びた高周波ブレードの爪先が俺たちの残像と置いてけぼりになった形代に突き刺さっていた。
「ボーっとしない!!」
「いや、まあ……、それより、この瘴気おかしくないか?」
「「「「……」」」」
七星に咎めれたが、それよりも究極奥義に不可欠なため探っていた瘴気が乱れている。瘴気が瘴気によって中和されつつある? そのことに気が付いて反応が遅れたわけだが……、誰も気が付いていないのか?
そんなことより、今は九尾の分身のほうだ。思考の矛先を眼下の敵に定めたのだか……。
九尾の分身は突然起こった津波に押し流されている。どす黒く染まった赤い津波が天橋立のような砂嘴(さし)を超え、魔物や魔物が食い散らかした肉片が綺麗並んだ黒松に引っ掛かり、そして薙ぎ倒して反対の海に流れ込んでいる。
一瞬で、見るも無残な地形に変貌していた。その中で玉藻の瘴気が今までにないぐらいに膨れ上がった。どうやら今までは力を抑えていたらしい。周りを漂う瘴気が共鳴すると、波間から波に飲み込まれた分身は九本の尾に戻り玉藻に引き寄せら引っ付くと、九尾が先ほどより眩しく光を放っている。
これが本来の姿か? 陰と陽を兼ね備えた姿は俺の奥義「金剛穢落ち(こんごうけがれおち)」に似ている。
この津波の元凶は化けクジラが苦しむようにのたうち回っているためだ。そして、今まで潮を吹いているように噴き出していた瘴気が止まっている。
鼻孔が詰まって暴れているのか? 苦し紛れに咆哮を上げ、調音波を発したのだ。
マッコウクジラは超音波を発し得物である魚やイカの場所を知ったり、超音波をぶつけて気絶されるエコローションという能力がある。その威力はダイオウイカでさえ麻痺させることができるそうだ。
超音波という脳を揺らす一撃は敵味方に関係なく猛威を振るう、俺たちは形代の身代わりでダメージが無かったことになっているが、輝夜は気を失っている。そんな恰好で気を失っている何か良からぬことが起こるって、もちろん後遺症が残ることを心配しているんだし、最悪の場合は死に至るかも……。
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