第3話 犬飼、楽々森彦、留玉臣が、俺たちの集団の

 犬飼、楽々森彦、留玉臣が、俺たちの集団の真横に二人、後ろ中ほどに一人と、俺たちを囲むように三角形の陣をいつの間にか敷いていた。まずい! これは陰陽道の結界陣?


「「「呪縛結界!!!」」」

 陣を敷いた犬、猿、雉のくそ野郎が印を結び、複雑な梵字と幾何学模様が組み合わされた呪符を打ち出すと、地面に同じような幾何学模様が浮かび上がる。


「くそがーーーー!!」

「動けん?!」


 怒りの任せて動き出そうとした俺たちは、体が痺れ手足が縛られたように動かせなくなった。


「バカな?! 」


加護により一瞬で真備との距離を詰め、そのまま、この拳で頭を吹っ飛ばしてやるはずだったのに‥‥‥、呪縛結界のため俺や一部の温羅一族が過酷な修行を通して、使えるようになったタタラ神の加護が使えなくなっている。


「さて、どうするか? そうだな、陰陽術鬼獣奇誕!!」


 嫌味な笑みを浮かべ、真備が人型の呪符を懐から取り出し空へ投げ捨てた。



 その人型はぐんぐん大きくなり、革鎧を装備した筋骨隆々の角の生えた大男になった。


 暴力を具現化したような武将の出で立ち‥‥‥。こいつらは噂に聞く真備が使役する最凶の式鬼神(しきがみ)、前鬼と後鬼に間違いない。


 こんな金縛りの状態じゃ、確実にこいつらに嬲り殺される……。周りの者たちも恐怖に凍り付いた。

 

「おやおや、わしの前鬼と後鬼に、お前らごとき屑の相手をさせるわけがありません。屑には屑の餌がふさわしかろう?」


真備は前鬼・後鬼に目配せをすると、二匹の鬼は地響きを立てながら俺たちの両横に移動した。


(何が、始まるんだ?)

「宴にふさわしい屑を召喚しよう!! 餓鬼道次元転移!!」


真備は残忍な笑みを深め、そう叫ぶとを印を組み、取り出した呪符を地面に張り付けた。

地面に光が走り幾何学模様が浮かび上がり三角形を作り上げた。


 陰陽道における二つの三角形は陰と陽の対極のものを和合して新たな六芒星の極を作り出すことを表している。その三角形の内部は結界となり陰陽道の呪符に刻まれる呪術が完成する。まあ、呪術〇戦に出てくる領域展開だと思ってもらえればそれほどの違いはない。


 最初に犬、猿、雉が展開した結界は呪縛。そして、真備が前鬼・後鬼と張った結界は転移。

 陰陽道には方位や属性による相性を利用して、相手を調伏する呪術がある。


そして現世(うつしよ)と対極の常世(とこよ)を和合させ、常世の住人を陰陽道で現世に転移する。


 しかも前鬼・後鬼の属性により、常世の輪廻六道の内、餓鬼道、畜生道、修羅道、地獄道に続く道を開くことが出来る。今回は餓鬼道が結界内に転移した。


 するとどうなるか? 地面から腐敗臭がする瘴気が湧き出てきたのだ。


「餓鬼、召喚顕現!!」


 どこから出てきたのか、真備のまわりに人型の式符が舞っている。


 そして結界内に人型式符が侵入してくると人型式符に瘴気が纏わりつき、肉体を形作り始め、腹だけが飛び出た醜い餓鬼に姿を変えた。今風にいうとゴブリンっていうやつにそっくりだ。


 百を超える餓鬼が片っ端から宇温羅一族に喰らいついて肉を引き千切る。周りで悲鳴やうめき声が上がり、生臭い血の匂いが腐敗臭に交じり、吐き気をもよおした。



 下品に歪む真備の面を睨みながら、腕や足に喰いつかれた痛みに耐えて周りの気配を読む。


 さいわい、俺の近くには俺と同じ温羅一族の加護を持つ仲間がいた。しかも俺を頂点に二つの三角の陣を張れる頂点の位置に4人がいる。


このまま、餓鬼に生きたまま食い殺されるぐらいなら、陰陽道は未熟だが……、やってやる。

「炎(えん=女)、水(すい=男)、光(こう=女)、影(えい=男)!! 加重で結界を破るぞ!! 」


 俺は四人に声を掛けた。


「「「「何だと? 加重で?」」」」


「自らの体重を限界まで自己加重して、炉心溶融(メルトダウン)を起して結界に穴を開けるぞ!!」


「そんなの無理だ!?」


「グダグダ言うな!! どうせ死ぬんだ!! 最後にあの真備に一泡吹かせてやろうぜ。結界の陣芯は俺に任せろ!!」


「わかった!! 確かに、お前の位置が適任か。やってやろうぜ!!」


「「おおっ!!」」 「「うん!!」」


 四人の声を受け、俺は印を組む。


「反重力制御!! 加重!!!!」


 俺が使える唯一の陰陽道の陣の呪符と同時に、たたら神の加護、反重力場の印で自らの体重を無限重力に加重して、自らの体重を無限大にする。

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