第37話 そう言えば、七星の光芒って刀身の転写範囲は
「そう言えば、七星の光芒って刀身の転写範囲は半径一〇メートルぐらいだけど、陰陽道の術式が繋がっている相手にはその術式の媒体を伝って、光芒の刀身を転写させることが出来るのよね」
「まあ、相手が光を反射させるものを持っている場合だけだけどね。今回の結界の媒体に使われたのは鏡やったからね」
彩夏と七星、そして柊がそんな話が終わった頃、屋根がふっとんだ社務所の前まで来ていた。そして、社務所の中を恐る恐る覗き込んだ三人は、神主の恰好をして男性を介抱している陣と輝夜、その後ろでその様子を見ている影羅陸だった。
◇ ◇ ◇
俺は混乱している輝夜さんを何とか宥め、神主さんの猿轡を縄を切った。
「ふはっ、助かった。いきなりさっきの人たちが訪ねて来て、八咫烏の十二烏の天祐と名乗り、八咫烏陰陽道の傘下に入れって言い出しおった」
「それで、なんと答えたんだ?」
「八咫烏陰陽道? そんなものが実在するのか? 目的は何だ?って、わしも神社に残る古文書(こもんじょ)で知ってはいたが……。ふざけているとしか思えんかったんじゃ……、奴らいきなり魔物を召喚しよって、ヤバい奴らじゃったわ。
後は、ここにある温羅鋼の武具を出せだの、なんのことかわからんというと、娘の無事を願うんなら、隠し事はやめたほうが身のためだと。そう言うと、わしを縛り上げ天祐と名乗った女を残して、娘を捉えるために外に出って言った。
奴らはそこのカレンダーから娘が今日帰ってくることを知ったようだった」
神主の言葉に、部屋を見回すとカベにカレンダーがあり、日付に輝夜帰省と丸印があった。
「それで、八咫烏のやつらが俺らを待ち伏せしていたんだ」
待ち伏せのおかげで自分も大変な目にあっているのに、輝夜の口から出る言葉は神主を心配する言葉だった。
「おとうさんも大変な目にあって……」
そんな親子の感動の対面も後方からの声で台無しだ。
「輝夜ちゃん無事だった?! 輝夜ロスなんてシャレにならんところやで? 陣を何回殺しても、釣り合わんところや、それに影羅、あんたもよう間に合った!! あんたら、間の悪さがあんたの売りなんやから!!」
「「間の悪いんは色恋の時だけやろ!!」」
輝夜さんの背後から声を掛けてきた彩夏を睨みつけ、俺たちは振り向いて全力で否定した。
でも、輝夜のおやじさんはそんな俺たちを見て、やっと平静を取り戻したようだ。
「いやいや、本当に君たちのおかげで助かった。君たち温羅一族の話については、輝夜から聞いてはいたんだが……。桃太郎伝説に秘密結社八咫烏陰陽道、絶対に作り話だと思ってたんだ。
だが、さっきの奴らのおかげで真実だと信じられた。わしもこの宇良神社に残されている古文書に書かれていることを君たちに話そう。君たちの参考になることもあるだろう」
「おとうさん。こんなとことで立ち話なんて。どこか落ち着いて話できる場所に移動しようよ」
「さすが女の子や、気が利くわ。長くなりそうやから、お茶でも飲みながら、ゆっくり聞きたいわ~」
輝夜は早く話したそうな父親を制して、天井が突き抜け、見渡せば足の踏み場も無いぐらい散らかっている部屋から場所を変えようと提案した。
そこに図々しくお茶を要求する七星。
「そうだな。輝夜の言う通りだ。皆さんを拝殿の方に案内して、お茶の用意も頼む」
「はい、それじゃあ、皆さん拝殿のほうにお願いします」
宇良神社拝殿は俺たちを追ってきたサバゲーコスプレ野郎が通り過ぎた時に、賽銭箱から奥の本殿に向かって嵐が過ぎたように祭具が取っ散らかっていたが、祭具で壊れた物はなくて、部屋の角にみんなで片付けて、座卓をロの字型に設置する。
そして、輝夜さんが座布団を出してきて、みんなは神主を中心に席についた。
そのタイミングでお湯が沸いたようで、輝夜さんが給湯室から戻ってきて、みんなにお茶を入れ終わって席についた。それを合図に神主が口を開いた。
「みなさん、よく来られた。わしはこの宇良神社の神主を務める第四八代を務める浦嶋子だ。皆さんはこの神社と温羅一族の関係があれば知りたいということで訪ねて来られたとのことだが……。
娘から訪ねて来るのは四人だと聞いていたんだが……」
「そうですね。私も今日初めて遇った人もいるので、自己紹介をしましょう。私は神主し浦嶋子の娘の浦輝夜と言います。同志館大学、文学部一年生です」
そんな感じで、俺こと祟羅陣、焔羅彩夏、氷羅柊の簡単な自己紹介が終わり、今度は俺たちの今世では、初顔合わせになる綺羅七星と影羅陸の自己紹介が始まった。
「うちは綺羅七星。出身は大阪の摂津。大学は立命社大学文学部三年、今日ここに来たのは、卒論のレポートネタでいい所があると言ういとこの陸に誘われたから! 昔の懐かし仲間、陣や彩夏や柊に遇えて嬉しいわ。昔と同じように大暴れ出来てすっきりしたし……。この先どうなって行くんや?って期待マックスで興奮するわ!」
「ワイは影羅陸、出身も大学も七星と一緒や。桃太郎伝説の真実を暴くと格好つけた卒論を書くために、比較論で浦島太郎を取りあげよう思うてここに来たのに、八咫烏が絡んでいるとなると、謎がさらにマシマシで神主さんから凄い話が聞けそうでラッキーやわ」
七星と陸もここに来たのはまったくの偶然、しかも目的が卒論ネタとか、彩夏と柊先輩と被っているし。思考パターンが同じって……、八咫烏との因縁もひっくるめて戦闘狂の血が騒ぎ出したようだし……。
まっ、血が騒いでいるのは俺も同じ。三辰が手に入ったし、これだけでここに来た価値があったもんだと考えていたんだが、さらに神主さんの嶋子さんに聞かされた話は衝撃的だった。
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