第11話 あの‥‥‥、三人はやっぱり知り合いだったんですか?
「あの‥‥‥、三人はやっぱり知り合いだったんですか?」
「うん、すごく古い知り合い! あんがとね。あたしらを引き合わせてくれて」
感謝する彩夏に投げかけた浦さんの疑問は答えにくい質問だった。
「幼馴染か何かですか?」
「幼馴染というより、修行した仲だよん!」
間髪入れずに軽くいなした彩夏はさすがです。
修羅道で一三〇〇年、殺人道を究めましたとは、さすがに答えられないんで。
「修行って武道か何かですか? そういえば、助けてもらった時の祟羅さんの動きって、あれは武道をやっている動きですよね。骨折の治りも早かったり、体を鍛えているって感じですよね」
「うん? まっ、そうかな?! こんなところでいつまでも騒いでいると邪魔になるから早く出ようぜ!」
一番騒いでいたのは彩夏なんだが‥‥‥。それでも言われたとおり出口へと体を向けた。俺の正面のやや離れた場所に浦さんがこっちを向いている。
その浦さんの様子が俺の方を見た途端おかしくなった。瞳が激しく揺れ、唇が細かく震えている。そして悲痛な叫びがその唇から搾りだされた。
「また、あの時の靄(もや)がエレベーターの扉から漏れ出てくるよ!!」
浦さんの叫びに、反射的に振り返った俺たち。俺たちの背後はエレベーターロビーになっていて、エレベーターの扉が二つある。その扉は閉じられているが‥‥‥。
「浦さん、どの辺からその靄は出ているの?」
「右の扉の隙間から‥‥‥、ドンドン濃くなっている!!」
浦さんの指をさした右側の扉は‥‥‥。
入院中に看護婦さんから聞かされた怪談では確か……。
地下の霊安室に唯一繋がっているエレベーターで、誰もいないはずの地下霊安室でエレベーターのボタンが押されエレベーターが地下に降りていった。不思議に思って同僚に声をかけてエレベーターの階を示す電光掲示板を見ていた。しばらくするとそのエレベーターが今度は上に上がってきたのだ。
それで宿直室にいる人たち全員でエレベーターの扉をみていたのだが‥‥‥。
エレベーターが止まり扉が開くと、今朝死んで霊安室に保管されていたお爺さんが出て来て、みんなに向かってお礼を言うように頭を下げるとその姿が消えたという、死んだ爺さんが最後に看護師さんたちにお礼を言いに来たほっこりとした話だった。
その霊安室のある地下からエレベーター上がってきているのだ。そして、エレベーターの電光表示が一階で止まる。
そして、開かれた扉から瘴気(浦さんが靄と表現する物)がスモークのように流れ出した。ここまで濃いと俺にも見える。辺り一面に腐臭がたち込める。ロビーにいた人には吐いた人もいる。
元々、気分が悪くて病院に来たのに‥‥‥、この臭いじゃ仕方ないか?
そして、エレベーターの中から現れたのは、額から角が生え血の気が失せた三匹の鬼人である。陰陽道の元祖と言われる道教の言葉を借りればキョンシーである。
死んだときは枯れたジジィやババァだったはずだが、今、目の前にいるのは獣じみた牙と爪と鋼の筋肉を持つ屍である。
怪しげな雰囲気に二人のガードマンがキョンシーの前に立ちはだかったが、キョンシーは意に介した子もなくロビーの方へ歩いて来る。(ギロリと周りを睨みつけながら、隙の無い野獣のような足取りで、某映画みたいにピョンピョンと飛んでくるわけじゃない)
業を煮やしてガードマンがキョンシーの肩を掴んだ。その瞬間、キョンシーはガードマンの顔面を鷲掴みにして、頭を握り潰した。脳漿をまき散らし、汚物を振り払うように左右の壁に叩きつけた。
壁に叩きつけられたガードマンたちは、壁に赤い影を縫い付け、バウンドした廊下に横たわる肢体はぼろ雑巾のように四肢はあらぬ方向に曲がっていた。
「「「ぎゃーーーーーーーーっ!!!!」」」
待合室のあちこちから、絞り出すような悲鳴が上がる。
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