第42話 vs 光の使徒⑪ 集結

「オーブお兄ちゃん!」

 リーデルの後ろから、ひょこっと少女が現れた


「リアンなのか...?」


「そうだよ! お兄ちゃん、生きていてくれて、本当によかった...!」

 リアンは肩を震わして泣いていた。


 紫色の髪を三つ編みにして両肩に乗せている。

 子供の頃見た時は、まだ小さかったから髪もそこまで伸びていなかったのだ。

 

「大きくなったな」

「へへ、お兄ちゃんもね!」


 リアンは、照れたように視線を外す。

 それを見て、俺も何を話すべきか言葉を探すも見つからない。


 だが、それでいいのだとも思う。

 言葉がなくても、心が溶け込むようにつながっていく感覚。

 これが家族なんだなと今、再度実感することができた。



「オーブ!」

「オーブ! よかった....!」


「ルク! リエル! 2人とも無事で良かった」


「私たちを庇って戦ってくれてありがとう....オーブ! 隊長さんが助けてくれたの!」

 リエルは、リーデルを見て言った。


「そうか、本当にありがとう。兄さん」


 ふん、と鼻を鳴らして、リーデルは笑った。


 



 手を叩く音が聞こえた。

 拍手の音だ。


「感動の瞬間だなぁ。あぁー、ああ! うっぜぇえなあぁ!!」

 リュミエールだ。


「もういいよ、お前ら。ここで死ね」

 リュミエールは、今までで一番強い光を出した。



 くっ...!

 眩さに目が開けられない。



【光の軍団】レギオン・オブ・ライト


 光の奥からさらに光の軍団が現れる。


 しかし、見るからに壁となる者達ではなかった。


「もう出し惜しみはしないぞ! これが僕の最大戦力だぁ!」



 リュミエールの前に、数百の強敵と思える戦士が現れた。



「地獄で後悔しろよぉ、ラージュ!」

 リュミエールは発狂するように叫んだ。


 澄んだ表情をしていた面影はもうない。

 視点が定まっていない様子だ。


 だが、ギョロッと俺へリュミエールの視点が集中する。



「それと、そこの小僧。お前は一番気に食わん。今死ね」


 そう言った瞬間、1人の戦士が俺に襲いかかってきた。



 やばい――



 まだ、リュミエールに撃ち抜かれた足が動かない。

 予期できていなかったせいで、聖霊魔法も発動する時間が足りない。


 斧のようなものを振り下ろしてくる。


 まずい、斬られ――



「無礼ですよ? そんな小汚い武器で攻撃されては。泥がついたらどうするんですか?」



――ザンッ?!



 俺を狙っていた戦士の首が落ちた。


「よくやった、セバスよ。」


「はっ。皆様方で対処するほどの価値は無いと判断し、勝手な行動を取りました。申し訳――」



「――セバス!」

 俺は、思わずセバスの言葉を遮って、名前を叫んだ。


 そのタキシードも、長い髭も、綺麗に整えられた白髪も。

 子供の時のままだ。


 ただひとつ違うのは、これだけ強いということを初めて目の当たりにしたということだけだ。

 今までは、話で昔は強かったということしか聞かされていなかった。



「おひさしゅうございます、オーブおぼっちゃま.....!」


 心なしか、あのセバスも涙を目頭に貯めていたように思えた。

 俺は、セバスの胸に抱きついた。



「なぁ、オーブ」

 後ろから肩を叩かれる。


 肩を叩いて、顔を近づけてきたのはリーデルだ。

 同じ方向を見ている。

 それは、リュミエールの方向だ。



「お前が、リュミエールを取れ。そのための道は俺たちが作る。」


「どうして俺が? みんなの方が強いし、俺では.....」


「聞け、オーブ。奴の情報は一番お前が持っている。それにお前は魔法が使えるだろ? 今この中で魔法が使えるのは、お前とリアンだけなんだ。だが、リアンは戦闘できるほど成長してない。ここはお前に頼るしかないんだ。」


 リーデルはひとつひとつ説明していった。


 その説得力の付け方や、納得感の出し方は、子供の頃と何も変わらない。

 少し違和感や納得できないことがあっても、納得せざるを得ない。



「分かった。これは俺が始めた戦争だ。俺が決着をつける。」



「それでこそ、俺たちの弟だ。」

「かっこいい大人になられましたな、おぼっちゃま」



「リアン、オーブの足を回復させてやってくれ。他のみんな、聞こえていたな?」


 リーデルは周りを見渡す。



 あぁ、このメンバーでなら負けようが無い。

 俺はそう確信した。


 あとは、俺が全てを出し切るだけだ。



「みんな、いい顔だ。さぁ、決着をつけよう....!」


『おう!!』

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