第41話 vs 光の使徒⑩ リーダー
「おいおい、勝手にいい雰囲気になりやがって! この僕を無視して許されると思っているのか!」
リュミエールは、側近の戦士を集合させている。
「あいつは?」
「
ラージュが、アレクシスに言った。
無駄のない説明で、連携の良さが伺える。
「ほう、ならあいつを殺せばいいってことだな?」
スパァンと拳と拳をぶつける音が響いた。
どうやら、アレクシスはいつの間にか、胸の前で拳同士を合わせるのがクセになっているらしい。
「ちっ、おいゴリラ。テメェいきなり出てきて、ラージュ君と馴れ馴れしく話してんじゃねぇぞ?」
「何? 知り合い?」
「顔見知りくらいだ。もう知り合いじゃねぇ」
「おい! 僕を無視するな! まったく、お前らみたいな粒が集まったところでどうにもできないことを教えてやったろう、ラージュ君?」
リュミエールは、両手を広げて、光を発し始めた。
「戻ってこい戦士達よ! どうせこいつらの最高戦力はここに集結しているはずだ! 数で押しつぶせ!」
「まずい、あの光の軍団を呼び寄せて、俺たちを囲むつもりだ」
俺は、ラージュ、アレクシス、ユミと順番に顔を見る。
だが、誰1人焦りを感じていない。
「どうしたんだ、みんな?」
「オーブ、大丈夫よ! もう直ぐ着くはずだから」
そういうとユミは、最後の砂煙の方へ視線を変えた。
俺もそちらへ視線を向ける。
すると、砂煙はどんどん近くなってきていた。
――いつの間に、そんなところまで!?
だが、リュミエールの反応は思っていたのとは違うようだった。
「くそッ、どうなってるんだ?! 戦士達が戻ってきている気配がない」
「まさか、あれって......」
「あぁ、兄さん達だ!」
――ゴゴゴゴゴ
地鳴りのような音は大きくなり、段々と砂煙の先頭に立ち、馬に乗って走っている集団が見えた。
その先頭で指揮を取る男は険しい顔をしている。
その視線は、一直線にこちらを見ている。
銀色の髪を毛先までピチッと整えており、その几帳面さが伺える。
遠くからでも睨まれているような気がするほど眼光が強い、キリッとした切れ長の目。
スッと通った鼻。
こんな緊張感ある場面においても、平静な表情ひとつ変えない冷静さ。
リーデル兄さん。
あの男は、グラン王家長男のリーデル兄さんだ。
こちらに突っ込むつもりだ。
「やばい! まだ残党があんなに!」
黄金の鎧を着た戦士達が、最高速度で駆け抜けようとする集団を止めようと、前に立ちはだかった。
リュミエールの能力が間に合ったか――。
「問題ない、このまま突っ込む。」
『はっ!』
前に軍団が立ちはだかったところで、お構いなしだ。
さらにスピードを加速させた。
「行くぞォォォォ!!」
『オオオオオオオオ!!!』
光の軍団と衝突する瞬間、リーデルの掛け声に反応した。
その覇気には圧倒される。
ずっと砂煙から聞こえてきていたのは、リーデルの声だったのだ。
安定していて、勇気がもらえる声だ。
リーデルの声は、いつも周りの人々に勇気を与えてくれる。
光の軍団もなす術なく蹴散らされた。
隊列を綺麗に組んでいた光の軍団は木っ端微塵に形態を崩された。
――ドガァン!!
軍団を薙ぎ払い突破した先には、俺たちがいた。
リーデルは馬の上から、俺を見るなり馬を降りて駆け寄ってきた。
そして、俺を抱きしめた。
「オーブ。よく生きて戦った。」
また、涙が頬を伝った。
こんなに立て続けに、サプライズが続くなんてずるいじゃないか。
耐えられるはずがないよ。
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