第45話 vs 光の使徒⑭ 最終決戦-残された謎-

 眩い光が瞼の隙間から差し込む。

 少し頭がくらくらする。


 光が淡く引いていくのを待って、瞼をゆっくりと開いていく。



「オーブ!? さっきのはオーブがやったの? 大丈夫?」


 ユミの声だ。


 声の方向に瞼を開けた。


 まだ視界がぼやけている。

 が、どうやらユミは元気そうだ。


 よかった――。



「オーブのおかげで、勝てたよ――!」


 ユミの奥に見える景色がふと目に飛び込んでくる。



 ――俺は目を見開いた。



 そこに見えてきた景色は、虐殺だった。



 黄金の鎧が川原に敷き詰められている小石のように転がっている。

 その中には、リュミエールが最後に召喚した屈強な戦士の姿もあった。


 これ全部、俺がやったのか――?


 転がっている黄金の鎧は、何一つ、ピクリとも動くことはなかった。



「みんなは.....、みんなは無事なのか!?」


 俺は、視界に映らない姿を求めて、目の前にいるユミにすがりついた。



「大丈夫。みんな無事よ」



「あの数をひとりで倒しちまうとは、驚いたな」

「やっと全力を出したってわけか」

「助かったぞ、オーブ」

「さすがはおぼっちゃまです」


 俺の視界の端から、ひょいひょいと、みんなが顔を出した。

 あの虐殺が行われた戦場にいたとは思えないほど、陽気で無傷だった。



 【神聖なる希望】ディバイン・ホープ

 俺がみんなから託された希望、想いを全てぶつけるつもりで発動した技。


 一体、何が起こるか分からないまま、発動させてしまった。

 俺は、まだ授かった聖霊魔法の力を侮っていたのかもしれない。


 こんな芸当、【神託会議】オラクル・サークルの使徒であるリュミエールもできなかったことだ。 

 ――まだまだ、修行が足りないな。



「俺たちの気持ちは届いたんだな、オーブ」

 ルクも、リエルの肩を借りて、ヒョイと現れた。


「ああ。ルクの言葉がなかったら、この力は出なかったよ。本当にありがとう」




「で、あいつも消えてしまったのか?」

 ラージュは、リュミエールをキョロキョロして探した。


「安心しろ。もう消滅寸前だ」


 全員の視線が、声の方に集まる。


 そこには、リーデルが片膝を地面についてかがんでいた。


 屈んだ先には、下半身が灰となって消滅を始めたリュミエールが横たわっていた。



「お前はもう消滅する。最後に聞かせてくれないか。【神託会議】オラクル・サークルとは、何のための組織なんだ? 目的を言え。」


 リーデルは横たわったリュミエールに聞いた。


 リーデルの言葉は、最後の慈悲でかけた言葉ではない。

 最後に聞いておかなければならない。

 何かの使命から駆り立てられるように聞いた、冷酷で残酷な言葉だった。



「ふっ、知りたいか.....? 話したら殺されるだろうが、今話したところで俺はどうせ死ぬからな。」


「ああ、話せ。」



「ならよ、まず、俺に教えてくれないか......? お前らは一体何者なんだぁ......? 僕が負けるだなんて、普通の人間じゃねぇからなぁ......」


 掠れる声を絞り出すように声を出す。


 リーデルは、少し押し黙った。

 そして、重く口を開いた。



「――お前ら組織が滅ぼした国、グラン王国の生き残りだ......」



 虚だった目が、クワッと見開かれる。


 リュミエールの視点が戻ってきた。



「あぁ。俺は負けたのか........」



......だと?」



 リュミエールは、ふっと笑い、ため息を漏らした。




「それなら、ここらへんでやめておけ......。お前らが進もうとしている道は、地獄しかないぞ......」



 リュミエールは、少し口角を上げて、微笑んでいった。



「なぜだ? 【神託会議】オラクル・サークルがそれだけ強大な組織だということか? 答えろ! とはどういう意味だ!!?」



「ひとつ....だけ......」

 リュミエールは、掠れる声を微かに出した。


「何だ!?」

 リーデルは聞き逃すまいと、耳をリュミエールの口元まで近づける。

 



「そこのガキの能力ちからは危険だ――。もう使うな――」


 リュミエールの視線が、一瞬だが、俺を捉えた。



「ガキ....?」

 リーデルは、リュミエールの目が俺を捉えていることを見抜いた。


「オーブのことか? なぜだ!? どう危険なんだ――!?」


 リーデルがもう一度戻ると、リュミエールは虚となっていて、問いかけにも反応しなくなっていた。




「おい!」

「どういうことだ! 答えろ!」

 リーデルは、リュミエールの肩をゆすろうと、掴むと幻のように消え去った。


「これは....」


 それをきっかけに、リュミエールの肉体は、灰となって、風に流された。

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