第35話 vs 光の使徒④ 第2ラウンド開始

「やはり、君は僕の妻となってもらう。そして、戦士として一生僕と戦い続けよう!」



 ラージュは、言葉を失い、全力で顔を顰める。


「冗談じゃない! つまり、私もお前を守る壁になれってことだろ?」


「君ほどの優秀な人材をただの壁に使うなんて勿体無い! 君は僕の右腕になってもらうよ」



 そう言うと、リュミエールは手を前に出し、光を集める。

 光が集まった先に、屈強な男の戦士が現れた。

 召喚したという様子だ。


 召喚された戦士は、見るからに先ほどまでの戦士とは違う。

 額や腕には、深い傷がついており、戦士としての経験や実力を外見からも感じられた。



「紹介しよう。ルクス・アウレア君だ。彼は元々、僕が滅ぼした国の騎士団長を務めていた男でね。最後の1人になっても僕に抵抗し続けた勇士に惚れて、スカウトしたんだ。」



「そして、もう1人――」


 そう言うと、リュミエールはもう片方の手から、光を出した。



「彼女は、フィデリス・ルミナ君。元々A級冒険者として名を馳せていたが、金に目が眩み、違法な商売に手を染めていたところを僕が救済した。」


 ルミナと呼ばれている女性戦士も、短い髪に引き締まった顔つきや腹筋を見ると冒険者として並の強さではないことが分かる。



「この2人のように、優秀な人間は、僕のお気に入りとして特別な戦士になれる。もちろん、ラージュ君もこの子達のようにかわいがってあげるからね」



「うわぁ....」

 俺は、姉さんが一番嫌いなタイプの人間だと思いながら、発言が痛々しくて表情を顰める。


 だが、ラージュは無反応だった。


 そして、冷静な表情と声で、俺に指示を飛ばす。


「オーブ。私があの2人を引きつける。リュミーエルは、オーブが倒せ。出来るな?」


 ラージュは、真っ直ぐにリュミエールを見たまま、目を逸らすことなく言った。


 リュミエールの強大さは、先ほどまでの戦闘を見ていると痛いほど分かる。



 本当に自分が倒せる相手なのか?

 一瞬、頭に弱気な感情が流れ込んでくる。


 だが、やるしかない。


 複数相手の戦闘は、戦闘経験と技術が高いラージュに任せればいい。

 俺は、聖霊魔法で火力は高いはずだ。

 意図してなかったが、リュミエールの壁を削ることにも成功している。



「分かった、できるだけ......、いや、必ずあいつを倒すよ!」

 俺は、ラージュからリュミエールに目線を移し、自分に言い聞かせるように言葉に出した。


「ふっ、いい男になったじゃないか。姉として誇らしいよ」

 ラージュの微笑んだ笑顔が想像された。



「あの2人のことは速攻で倒して、加勢に行くから。それまで死ぬんじゃねぇぞ!」


「ああ! そっちこそ、ヘマするなよ!」



「作戦会議は終わったかい? さぁ、第二ラウンドと行こうじゃないか!!」

 アウレアとルミナは、リュミエールの言葉を合図に、剣を抜いて戦闘体制を取った。

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