第41話

 イライラする。


「アアアアアアア!!!」


「GGGGRRRR!?」


 突如現れた触手を何本も生やした奴らを千切っては捨てるを何度も繰り返すも終わりが見えない。こんなことをしている間に奏は盤石の策を実行している事だろう。それは絶対に阻止しないといけない。


 体は昂っていて、さっきまで思考も昂っていたが今はかなり冷静に物事を見ることができている。そのお陰か、俺が最後に送ったメールの意味をしっかりと理解してくれたようで俺は少しだけ安心した。


 けれど、それとこれはまた別の話だ。


 彼女は俺に“一人じゃ何もできない”と言った。


「そんな訳ねぇだろうがアアアアアア!!!」


 ふざけるな……ッ!俺だって奏の手を借りなくたってできるんだよ……!


「“激暴曼荼羅”ァァァァァアアアアアア!!!」


 俺はアドバンスのもう一つの方を発動した。瞬間、俺の体が一瞬で膨れ上がったかのように一回り大きくなった。


 これは一時的に自身の身体能力を五倍以上に底上げするというもので、これを使ったら最後、3日くらい動けなくなる諸刃の剣だ。


 だがそんなこと関係ない。


「奏ェェェェエエエエ!!!」


 腕を横に一振りして全ての触手を粉砕すると、俺は奏のところに向かって駆け出した。


「「「GAAAAA!!!」」」


「邪魔だ!」


 ハイウルフが何体もいたが関係ない。今の俺は暴走列車のように止めることなどできないのだから。


「来ると思ってたわっ!拘束チェイン!」


「っ!?関係ないわアアアア!」


 俺は体を止めようとしてきた鎖を力ずくで引きちぎった。その時、



「────着火ファイア



「っ!?」


 地面が鎖を引きちぎったと同時に突然爆発し、俺の体を上空に飛ばした。爆発自体にそれほどダメージは無かったが、それでも隙だらけになってしまった。


「オオオオオォォォォォ!!!」


 俺は地面から来た巨大な針を刺されないように両手で抑え込む。しかしどんどん体は上に押し込まれていった。



 ドン!!!



 そして遂に俺の体は大穴の天井にぶつかってしまった。それでも俺を突き刺そうと針がグググと押し込んでくる。


「っっっ……!」


 歯を食いしばり、なんとかそれに耐えていると、今度はその左右からまた追加で針が何本も飛び出してきた。


「はあああああ!」


 俺は蹴って迫って来ていた針を破壊し、天井を蹴ってその場を離れる。瞬間さっきまでいた場所が串刺しになっていた。


 そしてまた空中に身を放り出した俺にさっきのような針がまた迫ってくる。それを空中で避けつつその針を足場として駆け出した。


「ふんっ!」


 今度は迫ってきた針を正面から殴って破壊していく。これらは大穴の地面で出来ているものだからか、拳が土だらけになった。


 そして地面にようやく着いた俺にいくつもの触手が襲い掛かってくる。それを掴んで千切ってを繰り返す。すると物凄い速さで俺に向かってくるものがあった。


 それを腕をクロスして防ぐ。


「まさか、モンスターじゃなくお前が出しゃばるとはなァ……!────奏!」


「私の方が強いって証明しないとあなた止まる気ないのでしょう……!だったら無理矢理にでも私自身の手で止めて、そのまま一緒に学校やめてどっか山奥でのどかに暮らす方がいいわ……!いえ、そうするわ!」


 そこには今まで見たことのないような獰猛な笑みを浮かべた、奏が剣を振り下ろしていた。

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