第40話

(千代久奏視点)


「ちょっと動きが悪くなってきたなァ!攻撃もさっきからしてこないしよォ!もっと俺にスリルを味合わせてくれやァ!」


「っ!」


 テンタクルスも満身創痍の中、私はいつ自分のスキルを使うか悩んでいた。やはり彼の成長速度は凄まじい。こんな時でも成長し続けている。彼の一歩で地面がその足跡を残し、一度まばたきをすれば目の前には彼の狂気に満ち溢れた顔が視界いっぱいに見えてくる。


 私はそれを見る前に予測を立て続け、まるで彼の未来を見るかのように避け続けている。そしてテンタクルスも私と疑似的だが殆ど同じ性能を持つ脳を持っているが故に私と同じ最適解を出し続けている。も、やはり図体がデカいせいか避けるのにかなり苦戦を強いられている。


 もちろん攻撃もしている。私ではなくテンタクルスだが。それでもあの頑丈な体に全て防がれてしまう。味方なら頼もしいこと限りないのだが、敵に回っている今、それが却って邪魔になっている。


「もっと……っ、手加減しなさいよ……っ!」


「そりゃあ無理な相談だなァ!」


「っ」


 彼が欲に溺れた形跡はない。どころか、もっと強くなろうと精進していた。それは私の為であり、そして将来の為だった。けど、私と付き合う事が出来た為、その理由の一つが失われてしまった。


 私は知っていた。彼がここまで強さを求めていた理由を。


 それは私を守るための揺るぎない名声を手に入れるため。確かな強さを世界に見せつけることでそばにいる私に手を出すと言う気概を無くす。本当に馬鹿な彼が思いついたただ一つの方法。


 だけど────



「もうやめよう!これ以上は無駄よ!」


「無駄ァ!?んなことはないッ!」



 私だって同じようなことを考えていたんだよ……?


 私だって、菅十と一緒に暮らすためにいろんな策を練っていたのに……っ!そう思うと何だか無性に腹が立ってきた……っ!


「ああもうムカつく……っ!これ以上は限界だわッッッ!」


 これ以上出し惜しみする必要なんかない。こんなに言う事を聞かないんだったら力ずくで無理矢理にでもいう事を聞かせる……っ!


「接続開始ッッッ!!!」


「ッ!?なんだ!?」


 私はこの階層とテンタクルスの脳を接続した。そしてテンタクルスを介して私の頭にこの階層の膨大な情報が流れ込んでくるがスキルを効果をフル活用して全て捌いていく。


 しかしそれが終わるまでに彼がこっちに攻撃してくるだろう。


「隆起!」


「うおっ!?」


 実際私に近づこうとしていた。だから地面からいくつもの針を出して無理矢理足止めした。と同時にテンタクルスを階層にある彼のアドバンスの力を無理矢理流し込んで強化し、彼に襲わせる。


「なっ!?俺のだぞッッッ!」


「五月蠅い!いう事を聞かないあんたが悪いんでしょ!」


「はあっ!?横取りは流石にないだろうがっ!」


「横取りも何も、元は階層にあった力でしょう!?だったら私が使えない道理は無いわっ!」


「ズルいだろうがアアアアアア!!!」


「だったら最初から私の言う事を聞いてその通りに動きなさい!あなたは馬鹿なんだから私がいないと何もできないでしょ!」


「そんなことは無いッッッ!!!」


 そう叫んだ彼はまるで鬼のような形相でテンタクルスに突っ込み、目にもとまらぬ速度で連打し一瞬で粉々にすると、そのまま私に向かってきた。


「モンスターカーニバル!」


 しかし私はそんな彼に20体ほどのテンタクルスをこの場に召喚して対抗する。突如現れたそれらに面食らった彼だが襲い掛かってきたそれらを一体一体相手取る。


 その間に私は私の周囲にハイウルフを15体召喚し壁とした後自身に永続の思考加速を施した。


 彼と違って既にアドバンスを制御下に置いている私はそれの暴走を考える必要などない為、私はとある試みを加速した思考下でやってみることにした。


「理論上、いけるはず……!」


 そして私は

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る