巨大な大穴で一攫千金を狙いたい少年VSそれを阻止して学生のうちに結婚したい少女
外狹内広
第1話 行きたい少年VS行かせない少女
「あなた……実は自殺願望でも持っていたのかしら?」
「持ってない。そうやって何でもかんでも決めつけようとするな」
「でも、この高校を志願するってことはそういうことでしょ?」
「むむ。だがな……こっちの方が──いや、何でもない」
「何よ、その含んだような言い方は」
「とにかく、俺はここに行くから」
「……」
中学3年の春。ほとんどの学生が未だどこの高校を目指すか悩んでいる時期に、俺──
何故勉強だけじゃなく筋トレをしているかと言うと、その方が勉強の効率が上がるからだ。俺にとっての話だが。
「……そんな訳分かんないこと言わないで私と同じ高校に行くの。いいわね?」
「やだ」
そんな俺の一大決心を語った直後に真っ向から否定してくる目の前の少女は俺の幼稚園からの幼馴染である
「なんでここにこだわるのよ。危ないのに」
「いいじゃん別に。俺、憧れてたんだよね。探索者に」
俺が生まれた年から約30年前。突如太平洋に半径約50kmに及ぶ巨大な穴が出現した。出現した当初は色んな憶測が飛び交ったが、取り敢えず調査しようと国連が言い出したことで各国から調査団を派遣し調査することに。
後に死の
そして奥に進めば進むほど今まで見たことのないような鉱石や、未知の生物──のちにモンスターと呼ばれる地球外生命体である──を討伐することで得られる、特殊な素材がドロップした。
その特殊な素材によって人類の技術の進歩は一気に加速した。
このような経緯があることで、死の大穴は今となっては人類の宝庫として重宝されており、この国だけでなく他の国でもその数ある資源を少しでも自国に持ち帰ってもらうために探索者の育成に力を入れているのだ。
と言うのを前に奏から教えてもらった。
「探索者なんていつ死ぬか分からない危険な職種じゃない。それだったらもっと安全なやつの方が……」
「そうだとしても、俺が出来るのは精々土木工事とかの力仕事くらいだろ。今から勉強しても、結局いいとこ行けずに貧相な生活を送るだけだ。それだったら一発命賭けるくらいしたいだろ」
「こんな時期からそんな諦めることないと思うんだけど……まぁ確かにあなたの腕力とかは異次元レベルだけど……鉄骨三本を片手で持ち上げたときは思わず叫んじゃったけど」
「それに、良い高校の探索科なら学力無くても実力さえそこで手に入れば卒業できる上に学歴も手に入る」
「最悪人生を棒に振るう事になるけどね。後普通に勉強できなきゃ留年もあり得るからね。そうね、確かにあなたは言っちゃ悪いけど脳筋だもの。自分のことをよく分かっているじゃない」
「……と、とにかく俺は探索者になるために、東京に出るからな」
「絶対にダメ!私と一緒に朱須賀高校に行くの!」
「そこって地元で一番いいとこの高校じゃねぇか!普通に落ちるわ!」
「だからって東京にまで出る必要ないでしょ!?」
「探索科のある高校で、俺程度の学力でも行けて、実績のある高校だとここしかねぇんだよ!」
「地元にも一つ探索科の高校あるじゃない!そこで妥協してあげるから、東京には行かないで!」
「……」
彼女の、絶対に行かせないという強い意志を言葉の端々から感じることができる……でも、やっぱり俺は彼女の願いは聞き入れられない。
俺の身を案じてくれているのは分かるのだが……それでは駄目なんだ……。
早く実績を積むためにも、東京の国立探索科専門学校に入学する必要があるんだ……!
「……やっぱり、俺はあの高校に行きたい。これは奏がどう言おうと曲げられない。絶対に」
「……そう」
いつも彼女の言うことは素直に従う俺だがこれだけはやっぱり譲ることができなかった。
俺のそんな気持ちが伝わったのだろう、俺の目を見た彼女はハッとしてから寂しそうな笑みを浮かべた。
俺は少しだけ彼女にそんな表情をさせてしまった事に後悔するも、これも必要な事だと割り切った。
「……こう言う時に限って、菅十は言う事を聞かないものね。分かってはいたけど、ここでそれはしないで欲しかったなぁ」
「……それは、本当にごめんって思ってる。でも、やっぱり俺諦められない。地元でこのまま燻ったままで、いられないんだよ。少しでもチャンスがあるんだったら、そこにしがみつきたい」
「うん、分かってる。菅十の探索者になりたいって気持ちは。子供の時から嫌ってほど聞かされたもの」
「……ごめん。だから、俺、向こうで立派な探索者になって帰ってくるよ。そしたら──」
「うん、待ってる。だから、頑張って生きて帰ってきて」
「分かった。約束する。俺は絶対に死なない」
そんな会話をしてから約一年後。
俺は無事国立探索科専門学校に合格することができ、通う学校から徒歩3分と言う近いところのアパートに引越し、一人暮らしを始めた。
そして入学の手続きやら何やらに追われつつ、トラブルはあったものの何とか無事に終わらせ、迎えた入学式当日。
なのだが──
「……なんでいるの?ついこの前地元でさよならしたばっかりだったよね?」
「あら、言ってなかったかしら。私、ここに合格してたの。そして今日からあなたの部屋で住む事になったから」
「……あ、そう────はあ!?」
本来いるはずのない地元の幼馴染──奏が俺と同じ制服を着て、校門で俺を待ち伏せしていたのだ。
そして俺に近づき満面の笑みを浮かべながら、彼女は言った。
「今日からよろしくね?」
「お、おう……」
……何で奏がここにいるの!?
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