第47話
『─────うっ……!?』
目が覚める。が……。
『─────ここは?』
自分の体が果たしてここにあるのかしっかりと分からない。こんな感覚、初めてだ。だけど不思議と悪くないと思っている自分がいる。
取り敢えずここはどこなのか、そして自分の今の周囲の状況を確かめよう。
まずはスキルが使えるかだけど……無理だな。全く反応してくれない。反応なんてしてくれたことなんてなかったけど、体に何かあった感覚がいつもあった。なのにそれが今は無い。
スキルが消えたのかな。
『─────ん?』
と、俺の目が俺の手を映した。けど、それは曖昧だった。手と言っていいのなら手だ。だけど輪郭がはっきりとしていない。
『─────体が無いのか』
口を動かす。
────動かせる。けど、触れない。
手をグーパーしてみる。
────できる。けど、はっきりと見れない。
足を上げてみる。
────上げれる。けど、どっちの足が上がっているのか分からない。
『─────なんだこれ』
声を出す。
────出せる。けど、思ったことまで口に出る時もある。
そう言えば、俺の最後の記憶ってなんだろう。
えっと……そこはしっかりと覚えてるのね。大量出血して死んだことは。そっか、死んだのか。
本当の意味で。
『─────ってことは、順当にいけばここは死後の世界ってことになる』
そっかぁ……死んだのか。
死んだからと言ってこれと言った感情が浮かばないのは何とも言えないものがあるが、これも死んだからなのだろうか。
感情が薄れているのを感じる。全てが曝け出されている状態だと思われるからか、感情が出た先から外にあふれる。あふれ出て行ってしまう。
『─────……どうなるんだろ』
天国か地獄……果たして俺はどっちに行くんだろうな。天国だったら何ができるんだろ。また筋トレとか……いや、もう奏に会えない以上意味ないのか。
だったら趣味に走るとか……いや、これといった趣味なかったな。奏を幸せにする一心で動いてたからな俺。それだけの為に生きていた気がする。
こう言ったら奏はきっと“私にとらわれすぎなのよ”って言いそうだな。
『─────本当にそうよ』
『─────っ!?』
は?
そこにいたのは、本来だったらいないはずの────奏だった。
彼女はまだ死んでいなかったはず。なのに、なんで……。
『─────なによ“は?”って……酷いわ。彼女に向かってそれは』
『─────え?いや……え?』
『─────なに戸惑ってるのよ』
『─────いや、なんでここに奏いるの……?』
俺自身はぼやけて見えていたのに、目の前の奏がはっきりと見える。死後の世界でまだ奏は死んでいないはずなのに。
『─────ここは死後の世界じゃないわ』
『─────……そうなの?』
そう聞くと、彼女の不服そうな感情がダイレクトに伝わってくる。
『─────……そりゃあ不服に決まってるでしょ。なんか勝手に息絶えてるんですもの。お陰で大変だったわ』
『─────……大変って?』
『─────まぁ、色々あったのよ。まさか本当にこれを使う羽目になるとは思ってなかったんだけど』
『─────これって……今のこの状況の事か……?』
『─────そうよ』
そう言って彼女は突然一層光始めた。
『─────これから最後の仕上げに入るわ。あなたを見つけることはできた。だから後は引き戻すだけ』
『─────……引き戻す?』
『─────……代償は、そうね。私の命そのものにしましょうか』
『─────命を代償って、何言ってんだ!?それやったらお前は』
『─────私は、死ぬときはあなたと一緒に死ぬって決めているのよッッッ!!!
そう彼女が叫んだ途端、俺の視界が徐々に暗くなっていく。と同時に、彼女の輪郭が徐々に消えていく。
『─────スキルコピー、
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