第17話 少年少女、先生VS絶望
「はぁ……はぁ……生徒たちはみんな、逃げたようですね……あとは上にいる先生に任せましょう……まずは」
「GAAAAAAAAA!!!!!」
「いつまでこいつを足止めできるか……ですね」
そう言って彼は大剣を構える。その腕には無数の傷があり、痛々しい。一目見れば満身創痍だが、“
「はあっ!!」
「GAAAAAA!!!!!」
ガキンッッッ!!!!
キングゴブリンが手にしている巨大な剣と彼の大剣がぶつかり合い、強烈な金属音が周囲にいた生き物らの鼓膜を襲うが、それを生み出した当人らは全く気にすることなく何度もその音を響かせた。
しかし、物には耐久力と言うものが存在している以上、それが長く続くわけが無かった。
バキンッッッ!!
「何っ!?」
先生の大剣が根元から破壊されたのだ。
「GAAAAAA!!!!!」
「くっ!?」
戦う為の得物が無くなってしまった以上、彼に戦う術もう持ち合わせていなかった。迫りくる死の気配を避け続けるしか、今の彼にできることは無かった。
だがそれがそんな長く続かないのは彼が一番分かっていた。
(“
そんな戦いを逃げずに見守っている者がいた。
(今一瞬見えた気がした……!)
奏は属道剛太と馳寺明里の二人を引き連れて、とある場所へと向かっていた。先生がキングゴブリンを引き付けているうちに。
「何かあったら属道君、宜しくお願いね」
「……はいはい」
「……」
「明里?無理しないでついてこなくてもよかったのよ?」
「だ、大丈夫……多分」
そして奏はさっき視界の端に見えた場所へと向かい、そしてついに見つけた。それを見た他の二人は最初これがなんなのか分からなかった。
「これは……?」
「大穴の真実につながる場所の入り口よ。これがあれば──」
その時だった。
「GAAAAAA!!!!!」
「あ!?先生!?」
「あああああああああああ!?!?」
断末魔が第九層に響き渡る。奏はさっきまで激しい戦闘が繰り広げられていた場所を目にし──その目を大きく見開いた。
「先生が……死んだ?」
そこには、上半身と下半身がお別れした、何とも残酷な先生の死体があった。あまりの出来事に彼女たちは思わず動きを止めてしまった。
(……っ!?まずいっ!?)
それがどれほど今の状況において愚かなことか、すぐに気付いた奏はすぐにそばにいた二人の体を揺さぶる。
「ここから離れるわよ……!」
「「っ!?」」
その判断は正しいが、遅かった。
「GAAAAAA!!!!!」
「っ!?見つかった!逃げろっ!!!」
三人は即座にその場を離れる。その際に属道が“スロー”を使いキングゴブリンの動きを遅くしたが、それでも元の身体能力が凄まじいのか、それでも人の走る速度以上の速さで追ってきた。
ババババンッッッ!!!
「GAAAAAA!?」
「これでも足止めにならないなんて……!」
「“スロー”ッッッ!」
「GUAAAAA!!」
「っ!?スキルが弾かれた!?」
ある一定以上の強さを持つモンスターの中にはスキルを打ち消すことのできる者がいる。だがそんなモンスターはより深い層でないと現れることが無い。
ではなんでこのキングゴブリンがスキルを弾くことができたのか。それはやはり特異モンスターだからだろう。特異モンスターであるキングゴブリンには驚異的な再生能力が備わっているが、その再生には自身に耐性を付与する、と言うものも備わっていた。
このキングゴブリンは既に二度属道のスキルである“スロー”をその身に受けており、そして先程奏が足止めとして放った銃弾によって受けたダメージを回復させる際、同時に“スロー”の耐性を得ることに成功していたのだ。
奏はそのことを“スロー”が弾かれたと分かった瞬間に気づいてしまった。
(焦ってその可能性があるって分かっていたのに頭から抜けてしまっていた……!しくじった……!)
人生でほとんど経験したことのなかった“焦り”と言う感情が彼女の思考を鈍らせる。そのせいで彼女のスキルが正常に機能しなくなっていた。彼女のスキルは感情にも左右されるからだ。
(このままだと……いや、そんなことは絶対にさせない……!)
自分の持つ願いの為、彼女はここで死ぬわけにはいかなかった。
「すぅ……はぁ……」
逃げながら彼女は深呼吸する。そして冷静になった彼女は今できる最善手を探すことにした。その為にもまずは目の前の脅威を少しでも別のところに逸らす必要がある。
ババババンッッッ!!!
「GAA!?」
彼女は大穴の壁を使い、銃弾を反射させまるで後ろに敵がいるかのようにキングゴブリンに攻撃した。
それに反応した奴は後ろに向けてその剣を振るった。
しかし、彼女が放った弾丸は後ろからだけではなかった。
「GA!?」
「……今のうちに、逃げるわよ」
四方八方から飛んでくる弾丸に戸惑い始めた隙に、彼女たちは即座にその場を離れた。だがそれを易々と見過ごすモンスターではなかった。
「GAAAAAA!!!!!」
「ちっ」
まるで逃げるなとでも言わんばかりの咆哮を上げたキングゴブリンは飛んでくる銃弾を無視して奏たちがいるところに向かって走り始めた。
(どうすれば──っ!?)
そしてついに目の前までやって来られてしまい、その剣が振るわれた。
(まずい──)
死の予感。奏はここまできてまだ諦めたくなかったが、横にいる二人の表情を見て──確信してしまった。
(あぁ……死ぬんだ、私)
後悔が彼女の胸を満たしながら、静かにその迫りくる剣を見つめた。
(ごめんね──)
そして心の中で謝罪の言葉を述べた、その時だった。
「─────どっっっっっせええええええええええええええいいいいいいあああああああ!!!!!!!」
「「「「っっっっ!?」」」」
「間に合ったアアアアアア!!!!」
謎の仮面をかぶった青年が突如現れ、キングゴブリンの巨体を吹き飛ばしたのだった。
「ぶち殺してやるぅぅぅぁぁああああああ!!!!」
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