第35話 勇者と元勇者
「ブラバスといいますと……勇者が誕生した地のことで間違いないでしょうか?」
オルティアさんの言葉に俺は無言で頷く。
「では何故……その者たちがこの地を襲撃など」
「それはわかりません……」
わからないというよりも確証できない……いや確証したくないと言った方が正解かもしれない。
襲撃していると話を聞くとほぼ同時に、あの聖剣を持った少女がここにいたことが俺の中での決定打となっていた。
——ブラバスはコンチネントエビルを復活させようとしている。
もし、俺たちと同じ目的であれば、襲撃などさせずに話し合いで解決すればいい。
話を聞く限りでは、ブラバスのやっていることはクレスタがライカンスロープ達にやったことと同じ。
「オルティア様!」
俺が考えていると、応接室のドアが開き1人のオーガ族の男が姿を見せた。
「どうしました、騒々しいですよ」
「失礼いたしました……、オルティア様少しよろしいでしょうか」
オーガ族の男はチラッと俺たちを見ていた。
どうやら、客人の前で話せる内容ではないようだ。
オルティアさんもそれに気づいたのか、こちらに一礼すると応接室から出て行く。
「……なあ、ゼスト?」
「どうした?」
オルティアさんが部屋を出ていくと、プリメーラが俺の顔を見ていた。
ちなみにナディアは話についていけなかったのか、俺の肩にもたれかかって眠っていた。
「さっきの話の続きだが、もしかしてブラバスがコンチネントエビルの封印を解いてると思っているのか?」
考えていることを言われて俺は驚くが、顔にださないように天井を見ていた。
「……人の心を読むとる魔道具でもあるのか?」
「あったら別のことで使いたいな」
プリメーラはふふっと笑っていた。
「冗談はさておき……私も同じようなことを考えていたんだ。 ゼストが国から追い出された後に大陸でコンチネントエビルと対峙することが多くなった。 それに雪原であの少女がいたことが決定打になった」
「……俺も同じ考えだ」
ため息をついていると、応接室のドアが開いた。
ドアの奥には先ほど出て行ったオルティアさんの姿があった。
先ほどとは違い険しい表情を見せている。
「プリメーラ様、先ほどの僧侶に見せていた女の姿がなくなっていました」
「ど、どういうことですか……!?」
「僧侶の話では治療の途中で、目を覚ますと同時に剣を取って出てしまったようです」
「それで、あの少女はどこに?」
オルティアさんは少し考え込んでいたが、すぐにこう告げた。
「集落の奥にある、祠です」
「もしかしてそこには……」
「コンチネントエビルを封印してある場所です」
彼女の話を聞いた俺はラファーガを持って家を出ていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「思いがけないの出来事ですが、無事に集落に入れたのでよしとしますか……」
集落の奥にあった祠に入っていき、長く続く階段を降りて行く。
「ここにある聖剣を封じた力を解放すれば……」
聖剣ソアラブレイドは真の力を発揮することができれば、私が皆を救う力を手に入れることになる。
——あの時、魔物から私を救ってくれた勇者様みたいに。
そして、階段を降りきり、奥へと進んでいくと部屋の中心に光り輝く石が置かれていた。
「これが……剣の力を封印しているのか!」
すぐにソアラブレイドを引き抜き、斜め上へと斬りあげる。
石に亀裂が入り、上の部分がドスンと音を立てて落ちていった。
「これで聖剣も真の力が……」
その直後、部屋の奥の壁が粉々に砕かれ、中から見たこともない魔物が姿を現した。
見た目は大きなヒョウに見えるが、身体中に鋭い氷柱のような棘が生えていた。
「グォオオオオオオオオオ!!!!」
魔物は耳に突き刺さるような雄叫びを上げると体中に生えている氷柱を飛ばしてきた。
「そんなもの……ッ!」
目の前に向かってきた大きな氷柱は斬り落とすことができたが、それ以外の小さな氷柱が私に襲いかかる。
鎧に当たったものはその場に崩れ落ちていったが、無防備な手や足に容赦なく突き刺さっていた。
突き刺さった箇所からは血が流れ出し、少しずつ痛みも出始めていた。
「……これぐらい!」
痛みに耐えながら目の前の魔物を斬りつけようとするが、鋭い爪で受け止められてしまう。
剣を飛ばされないように、必死に力を入れて抵抗を続けるが、振り払われ、私の体に叩きつけれた。
「グォオオオオオオオオオ!!!!」
私が動けないことに気づいたのか、魔物はもう一度雄叫びを上げると、氷柱をこちらに向けて飛ばしてきた。
意識が朦朧としながら、氷柱を切り落とそうとするが、思うように力が入らず氷柱は勢いよく私に向かっていた。
——私はまだ、何もしていないのに!
「大丈夫かッ!」
声がすると同時に、私の目の前に見知らぬ男が立っていた。
いや、この姿は……!?
「オーラフィールド!!」
目の前の男は手にした黒い剣を掲げると私たちの周りに白い光が覆っていた。
その光に当たった氷柱はバキバキと大きな音を立てて消えて行く。
私を仕留めることができなかった魔物は驚いたのか、後ろに後ずさる。
「……間に合わなかったか、それならこいつを倒すだけだ!」
男はそう呟くと魔物に向かって駆けていった。
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【あとがき】
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