国王殺しの罪を着せられ国を追放された元勇者、旅の女エルフと出会い旅にでる。 旅を続けていくうちに、女エルフのスキンシップが増えてるような気がするが考えすぎだろうか?
第24話 ライカンスロープの集落にて……
第24話 ライカンスロープの集落にて……
「人間は……いますぐ帰れぇぇぇぇ!!!」
ライカンスロープの少女はこちらに駆けてくると、伸びた爪を大きく振り上げる。
発生した斬撃が地面を這ってこちらに向かってきた。
「っと……!」
真っ直ぐに向かっていたため、軸をずらして避ける。
だが、その隙を逃すことなく、少女は爪で俺の正面を何度も掻きちらしてくる
攻撃がまっすぐなためか、剣身で弾き返していく。
「何で、当たらないんだよ!」
少女は一度後ろに下がると、苛立ちからか、その場で地団駄を踏んでいた。
「……若いな」
後ろでデュアリスを構えているプリメーラが呟いていた。
「……攻撃が馬鹿正直だしな、あまり戦闘経験を積んでいないのかもな」
戦闘経験を積んでいけば強くなれるのかもしれないなと思ってしまう。
「これ以上長引くとちょっと不利になるからそろそろ終わらせてもらう」
そう告げると俺はラファーガを両手で構えると、気合いをいれるために大きく息を吸う。
俺が攻撃を仕掛けることに気づいた少女はこちらに向かって駆けてくる。
——悪いが遅い。
ライカンスロープの少女は突如起きた衝撃で後ろに倒れていた。
「……!」
「なっ……!?」
驚いたのは少女だけではなく、後ろにいたプリメーラも驚いていた。
「……チェックメイトだな」
俺は倒れたライカンスロープの少女に剣を向ける。
「くっ、人間なんかに捕まるぐらいならいっそ殺せ!!!」
少女は叫ぶが、本心では思っているわけではないのか目には大量の涙が溜まっていた。
「っておい、別に俺たちは捕まえたり食ったりなんかしないぞ」
俺が声をかけると、少女は目をまんまるにしていた。
「え? じゃあ何で人間がこんなところにいるのさ!」
「そなたたちと話をしたいからだ」
徐々に少女の元に近づきながらプリメーラが告げる。
「え……エルフ!? あれ……なんで人間とエルフが一緒にいるの!?」
キョロキョロと俺とプリメーラを見る少女。
「できれば、そなたたちの長と話がしたい、案内してくれないか?」
プリメーラは凛とした表情で少女にそう告げた。
「これは私の孫が失礼をしました……」
少女の案内でウェルナー山脈の麓にあるライカンスロープの集落へとやってきた。
集落といっても人間のように建物が立ち並んでいるわけではなく、身を寄せているだけのようだ。
その中でも唯一と言える建物の中に入っていくと、老いたライカンスロープがいた。
どうやら、この人(狼?)が長のようだ。
「ナディア、おまえもちゃんと謝りなさい」
長はもっていた杖で少女の頭を叩く。
頭をさすりながらナディアと呼ばれた先ほどの少女は小声で謝罪していた。
「それで、エルフと人間……」
長はプリメーラの顔を見ると、言葉が止まっていた。
「いや……お主、ダークエルフか」
長の言葉にプリメーラは驚きを隠せなかった。
「……ダークエルフ?」
一方、ゼストとプリメーラがライカンスロープの集落を訪れている頃。
カーロラ王家の第二王子であるクレスタ・ビタ・カーロラは闇に包まれたと思える空間にいた。
「それで、カーロラ王国はライカンスロープたちを殲滅するように仕向けましたか?」
「それが……」
重々しい声に対して、クレスタは弱々しく声を上げていた。
「……失敗したようですね」
その言葉にクレスタは体が震え出していた。
「う、うまくいくはずだったんだ! けどあの勇者のせいで!!!!」
声を震わせながら必死に自身を正当化させるクレスタだったが、相手からはため息が聞こえていた。
「何があったにせよ、失敗したことに間違いはないようですね……」
「ぐっ……!」
正論を返され、クレスタは言葉を詰まらせてしまう。
「それにしてもブラバスの王殺しがこんなところで出てくるとは……どこまでも厄介な人間なんだ」
またもやため息が聞こえてきた。
クレスタにではなく、別の人物に向けて……。
「それなら、あなたにはあのブラバスの王殺しの処分をお願いするとしましょうか、それができればさきほどのことは不問としましょう」
「お、おれがあの勇者をか!? できるわけないだろ! あの男は魔王を倒したことがあるぐらいの力を持っているんだぞ! 俺なんかが……!」
クレスタの叫びに何度目かのため息が聞こえてきた。
「それならこれを使ってください」
クレスタの目の前に禍々しい装飾がされた大剣が現れる。
「それは由緒ある強力な剣ですよ、それがあれば勇者に対抗できるでしょう」
クレスタはその大剣を両手で掴む。
「おぉ……! 力が! これは素晴らしいものだ!!!!」
当の本人は気づいていないが身体中に黒いオーラが纏い始めていた。
「それじゃお願いしますよ……次期カーロラ王となる者よ」
その言葉に満足したのかクレスタは自信たっぷりな表情を浮かべながら姿を消していった。
「……はは、単純な男ですね」
笑い声が空間にこだまするが、クレスタの耳に入ることはなかった。
「まあ、あの男は失敗すると思いますし、次のプランを考えなくては……」
先ほどよりも大きな笑い声が響き渡った。
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