第49話 ゼストvsセリカ

 「やめろセリカ!!!」


 俺の声に反応することなくセリカは聖剣を振り下ろしてきた。

 ラファーガの剣身で受け止めるが、何度も叩きつけてくる。

 

 「……悪いな!」


 彼女の動きを止めるために隙を見て、肩を突き出してセリカを押し飛ばす。

 奥でドサっと鈍い音がしていた。


 「セリカ……」


 すぐに彼女の元へ駆けつけようとするが、先にあちらが姿を見せてきた。

 彼女の持つ聖剣は炎を纏っており、大きく横凪ぐと炎の渦がこちらへと襲いかかってきた。


 「オーラフィールド!!」

 

 ラファーガを上空に掲げて光の壁を発生させ、彼女の放った炎の渦をかき消すが、彼女の姿がなくなっていた。

 その刹那、真上から殺気を感じた。

 上空にはセリカの姿があった、そして彼女の持つ剣にはバチバチと音を立てて稲妻が纏っている。


 彼女の攻撃を受け止めるためラファーガを両手で構える。

 ガキーンという甲高い音が部屋中に鳴り響いていく。受けきることはできた……。

 だが、剣に纏っていた稲妻がラファーガの剣身を走り、俺の体を締め付けてきた。


 「があああああああああ!!!!」


 全身に痛みが走り、俺は叫び出しながらその場にのたうち回っていく。


 「無様な姿だな、ゼスト」


 突如、聞き覚えのある声が聞こえ、俺は痛みに耐えながらも顔を上げる。

 

 「イソッタ……王太子……!」


 俺の真上にはイソッタ王太子が口元を曲げながら立っていた。

 だが、すぐに……


 「口の聞き方には注意してもらおうか! 私は国王イソッタだ!!!」


 怒りに満ちた顔へと変わり、倒れている俺を何度も蹴り付けていく。

 痛みでまともに動けることができず、防御できずそのまま受けてしまう。


 「どうだ苦しいか! 国王に逆らうものは皆そうなるのだ!! ふはははははは!!!!」


 俺の苦しむ顔を見たイソッタ王太子は悦に浸っていった。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 「2人とも、大丈夫か?」

 「まだまだ平気!」


 ご老人の言葉にナディアはすぐに元気な声で答える。


 「無理とはいえないが、大丈夫ともいえないな……」


 周囲を見渡しながら私はそう返事をした。

 倒しても、次々とやってくる魔物の姿を見ていると夢であってくれと思いたくもなる。


 「たぁ!!!」


 ナディアがこちらに向かって走っていたゴブリンやオークといった魔物を大きな爪で切り裂いていく。

 私もそれに負けじとデュアリスから矢を放ち、魔物を撃ち抜いていく。

 だが、いなくなった魔物を穴を埋めるかの如く、新しい魔物が姿を見せていく。


 「……地獄絵図というのはこういうことを言うのかもしれないな」


 こんな状況に思わず笑いが込み上げていた。

 笑いでもしなければ正気を失いかねない。


 「……仕方ない、体に負担がかかるがやるしかないようじゃな」


 そんな折、ご老人が私たちの前に立つ。


 「ご老人、なにを……!?」

 

 ご老人は両手に前にだし、小声で何かを呟き始めると手に魔法陣が描かれていく。


 「詠唱魔法……いや、ちがうこの魔法陣は……!」

 「我が敵を焼き尽くすのじゃ! 炎将インフェルノ!」


 ご老人が叫ぶと魔法陣から全身に炎を纏った大きな獣が姿を現し、目の前の魔物が炎に包まれていく。

 炎は周りを巻き込んでいき、次々と火が大きくなっていた。

 

 「ぐぎゃああああああああ!!!!」

 「ぎぎゃああああああああ!!!!」


 同胞が燃えていく姿を見て魔物は逃げようとするも、炎の獣は容赦なく燃やしていく。

 叫びながら消し炭になっていく光景を目にして恐怖を感じてしまう。

 

 先ほどまでこの一帯を埋め尽くしていた魔物は全て燃え尽くされ、この場にいるのは私たちだけとなった。


 「おじいちゃんすごいよ!」

 

 喜びのあまりナディアはご老人の手を取ってぶんぶんと上下に振っていた。


 「ふぉふぉふぉ、ワシもまだ若いものには負けて——」


 話の途中でご老人は膝を床につけていた。


 「お、おじいちゃん、大丈夫?」

 「大丈夫じゃよ、やぱり年には勝てんようじゃな」


 ご老人はナディアの手を借りてゆっくりと立ち上がる。


 「……精霊召喚、しかも上位の精霊を呼び出せるあなたは一体……?」


 私の言葉にご老人は笑い声をあげていた。


 「なーに、見ての通りの単なるヨボヨボのジジイじゃよ」

 

 そう言っておくにある階段へと向かっていった。

 

 「……はぐらかされたか」


 私はため息をついた後、ナディアと一緒に彼の後を追っていった。


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【あとがき】

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