第48話 城の中へ

 「一体何があったんじゃ!?」


 ボロボロのローブの男が大声で問いかけていく。

 

 「牢から出したところで兵士たちが押し寄せてきてな、反対側へ逃げるように言って、すぐに嬢ちゃんの元へいったんだが……そこに姿はなかった、扉を開けた形跡はないから下手したら……」


 黒いローブの男は「クソッ」と悔しそうな声を出す。


 「……セリカは大丈夫なのか?」


 俺は2人に声をかける。


 「正直、大丈夫とは言えないかも知れん……」

 「マジかよ……」

 

 俺はラファーガを持って外に出ようとするが、ボロボロのローブの男に止められる。


 「どこへ行こうっていうんじゃ?」

 「セリカを探しにいくんだよ……」

 「宛もないのにか? 下手すれば兵に見つかってお主が捕まるかもしれんのじゃぞ?」

 「だからって——」


 俺の話を黒いローブの男が止めた。


 「セリカは俺が探す、アル、お前はこの子らと一緒に城へ迎ってくれ」

 「なんじゃ、珍しく責任を感じてるのか? いつもなら全く気にせんのに」

 「1人のほうが動きやすいからだ」

 

 黒いローブの男の返答にボロボロのローブの男は「素直じゃないのう」と笑っていた。


 「では、ワシらは城の中に向かうとしよう!」


 そう言って黒いローブの男が出てきた本棚をスライドしていった。




 本棚の奥からハシゴを使って地下へと降りていく。

 たま狭い道を歩くのかと思ったが、降りた先は思っていた以上に広かった。


 「ご老人、ここは一体……?」

 「噂によると、王族が使っていた抜け道のようじゃな」

 「王族のって……何でアンタが知っているんだよ?」

 「無駄に長年生きておれば、いろんなことを知るもんじゃよ」


  ローブの男はふぉふぉふぉと笑っていた。

 

 「ゼスト、どういうこと?」

 「いや、俺にも全然わかんない……」



 ローブの男の後をついていきながらしばらく歩き続けていくと広いフロアへと入っていった。

 

 「この先にある階段を登れば城の中に入れるんじゃ」

 

 それを聞いて普通なら安心したいところだが、奥から見えてくるものを見てそんな気持ちにはなれなかった。


 「何だ、あの大量の魔物たちは……!」


 俺たちが行こうとしているところからオーガやゴブリン、リザードマンなど大量の魔物がこちらに向かっていた。


 「ふぉふぉふぉ、今のブラバス城は伏魔殿になってるようじゃな」

 「……何でこんな状況で笑ってられるんだよ!」


 俺はラファーガを構えて敵陣へと駆けていく。


 「プリメーラ! 後方援護を! ナディアはそこの男を守ってくれ!」


 俺が告げると2人はわかったと叫ぶ。


 「オーラバスタァァァァァァ!!!!」


 敵陣の中心部に入ると、光を発生させて周辺の魔物を消滅させていく。

 光にのまれなかった魔物は俺に向かって武器を振り下ろしてくるが


 「グギャアアアアアア!」

 「ギギャアアアアア!」


 プリメーラのデュアリスから放たれた魔法の矢に貫かれて倒れていく。

 俺は大声でプリメーラにお礼を言いながら周辺の魔物へ向けて剣を振り翳していく。


 「……相変わらずじゃな、あの男は」

 「おじいちゃん、何か言った?」

 「いやいや、単なる独り言じゃよ」


 奮闘の成果、魔物の数は減りつつあった。

 だが、全員を相手にしようとすると、こっちの体力がなくなってしまう。

 こうなったら強行突破をするしかない……


 大声で伝えようとした時、行こうとしている場所に見覚えのある姿が見えた。


 「セリカ……!?」


 俺の声に反応してプリメーラとナディアが同じ方向を向いていた。


 「よかった、無事なのか! 今そっちにいくから待ってろ!」


 俺に近づく魔物を蹴散らしながら彼女の元に向かおうとするが、セリカはそのまま階段を登っていった。


 「セリカ、待ってくれ!」


 後を追おうと階段に近づこうとすると、魔物の叫び声が聞こえてきた。

 振り向くとプリメーラやナディア、ローブの男が魔物に囲まれていた。


 「今戻る……!」

 「いや、お主はそのまま先に行くんじゃ! こっちは何とかなる!」


 真っ先に声を上げたのはローブの男だった。


 「けど……!」

 「早く彼女の元にいくんじゃ……!」


 俺はすまないと言ってそのまま階段を上がっていった。



 階段を登っていった先には見覚えがあった……

 ここはたしかアルシオーネ様の寝室だ。

 先ほどの地下道が王族専用の抜け道と言っていたのが理解できた。


 辺りを見渡すが、先ほどのセリカの姿はなかった。

 警戒をしつつ部屋の先にある階段を降りる。

 その先には謁見の間に続いているはずだ……。


 「……謁見の間か、まさかここにくるとは思わなかったな」


 あの時のイソッタ王の顔と言ったことは植え付けられたかの如く脳にこびりついている。

 できることなら剥がして忘れたい。


 「……セリカはいないか」


 ここにはあまりいたくはなかったので、さっさと進もうとするが……。


 「ゼスト……様」


 奥から微かに声が聞こえて足を止める


 「その声、セリカか……」


 俺の声に応えるように足音がだんだんと大きくなっていき、暗闇からセリカの姿が見え出した。


 「よかった……無事だったか、心配したぞ」


 ラファーガを鞘にしまって彼女に近づこうとする。

 だが、セリカは聖剣を手に取って大きく剣を振り上げてきた。


 間一髪で避けることができた。

 

 「セリカ、どうしたんだよ!」


 彼女に声をかけるが、それに応えることなくセリカはもう一度聖剣を振り上げた。


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【あとがき】

お読みいただき誠にありがとうございます。


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