第17話 朝日とともにウェインズ大陸
「綺麗だな…」
「そうだな…」
海から徐々に 昇りつつある太陽を拝みながら、俺達は感じたままを口にしていた。
途中の休憩所に着き、その言葉通り体を休めていた。
正確に言うと休み過ぎていたというのが正解だな。
地下という日が当たらない場所だったせいか時間の感覚がなくなっており、ほぼ半日位上寝ていたようだ。
「プリメーラに起こされなかったら、まる一日寝ていたかもしれないな」
いつもは俺が彼女を起こしているが、今回に限っては俺が起こされる立場になった。
そして、慌ててトンネル内を歩いていき、出口から外に出ると、夜明けの光景を拝めることができた。
「こんな素晴らしい光景を見ることができたんだ、まさに怪我の功名というものではないか?」
「ものは言いようだな、たまにはいいか」
出た直後は薄暗かったが太陽が完全に登りきると、辺り明るくなっていった。
「それじゃ、カーロラ王国にいくとしよう。 ここからそう遠くはないからな」
彼女の言うとおり、海底トンネルの出口からカーロラ王国までの距離は短くあっさりとたどり着いた。
朝も早いせいか人はまばらだった。
この国は魔法の素質のあるものの教育に力を入れているためか、教育施設やそれに付随する学生寮などが立ち並ぶ、いわば学園国家ともいわれている。
学生達にとって過ごしやすく学びやすいところではあるが、それ以外の人にはあまり魅力は感じない。
「早速、国立図書館に行きたいところだが、その前に腹ごしらえをしておきたいところだな」
「たしかにな…」
さすがに半日位上食べていないのでさっきから腹の虫がキューキューと鳴き叫んでいた。
食べれるところを探してを歩いていると、露店を発見した。
「お、いらっしゃい! やきたてのパンがあるよ!」
露店の前に並ぶパンからほのかに甘い匂いがしていた。空腹時にこの匂いは良い意味で胃を刺激する。
「それじゃ、こちらのパンをいただこうか、ゼストはどうする?」
「俺も同じでいいよ」
どうやらプリメーラも胃を刺激されたのか真っ先にパンを選んでいた。
「お二人さん、ここの学生さんかい?」
「いや、違うが…」
「それじゃ、正規の値段になるけどいいか? ここの学生さんだと半額以下になるんだけどね」
露店の主人曰く、国から助成金がでるとかで学生には安い値段でていきょうできるらしい。
金額を聞いてもそこまで高い金額ではなかったので不満なく支払ってからその場を後にした。
「この国の制度は素晴らしいな」
買ったパンを食べながらプリメーラは1人で関心していた。
「そういえばアルシオーネ様も言っていたな、若いものを育てる力のある国は成長していくと」
ブラバスも若手の育成に力を入れていた。
勇者降臨の儀もその一環だ。
勇者になったものは国が全面的にサポートをしていってくれるという。
それまでろくでもない人生を送っていた俺にとって勇者になったことは転換期ともいえる。
だからこそ、俺はアルシオーネ様のいる国を守りたいと思っていた。
「なるほどは先代の王はとても聡明だったんだな」
「あぁ……」
なのにどうしてこんなことになってしまったのだろうか、悔やんでも悔やみきれない気持ちになる。
「それじゃ、そろそろ行こうとするか!」
「どこへだ?」
「国立博物館に決まっているだろう!」
自信たっぷりに応えるプリメーラ。
その様子を例えるなら何かを待っている子供のようだった。
国立博物館はカーロラ王国城下町奥地にある建物にあった。
プリメーラの話では何百年も前の魔道具が展示されているとか……。
正直それだけ聞いても俺には何がいいのかさっぱりわからなかったが、彼女にとっては素晴らしいことなのだろう。
博物館の入り口には博識がありそうな人が立っており、中に入ろうとすると呼び止められた。
「大変申し訳無いが、こちらに名前の記載を」
その中でも一番の年配者だと思える人物がテーブルの上の用紙を指さしていた。
「すまないな、最近は展示物を盗もうとする輩が増えてな……」
俺とプリメーラは用紙に名前を記入する。
「よし、通っていいぞ。 言っとくが中のものには手を触れるんじゃないぞ」
2人揃ってわかりましたと告げ、その場を後にした。
「ん? ゼスト・インテグラ?」
なんか遠くで俺の名前が呼ばれた気がするが、気にせず俺は先を歩くプリメーラを追いかけていった。
「おおおおっ!! これは!!」
博物館の中に入り、一番最初に目についたものをみて大声をあげるプリメーラ。
彼女が見ているのは四角い少し厚めの板のようなものだった。
「……なん何だこれ?」
俺が疑問をぶつけるとプリメーラは目をキラキラと輝かせていた。
「これはガラパゴスと言ってな、これがあれば遠くにい者と会話ができるという魔道具だ! ちなみに会話ができるだけじゃなくてその相手がどこにいるか教えてくれるという機能もついてだな……」
いつものプリメーラの癖がでてしまった。
ちなみにどの魔道具を見ても興奮気味に語りだしてしまう始末。
そろそろ俺の頭が知恵熱でやられると思っていた頃に鎧を身に纏った集団が目の前に立ちふさがった。
「ゼスト・インテグラ殿で間違いないないでしょうか?」
その一人が俺の名前を口にしていた。
「……そうだけど?」
なんとも言えない緊張感が走り出していた。
だが、その奥から聞こえた声で緊張感は一気に消え失せていった。
「まったく、そんな重々しくやるなっていったろ?」
その声が聞こえると鎧を纏った集団は膝を地につけていた。
そこから現れたのは輝くような金色の髪に整った顔つきの男だった。
「いやいや悪いな」
そう言って男は俺の顔を見ていた。
「久しぶりだな、ゼスト」
男は俺に向けて手を差し伸べる。
ため息を着きながら俺は男の手を握る。
「2年ぶりですね、チェイサー王子」
俺の返答に男は嬉しそうな表情を浮かべていた。
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