第31話 極寒の大陸ヴェゼル大陸にて
「ぶえっくしっ!」
「大丈夫か、ゼスト?」
「急に寒くなってないか?」
ウェインズ大陸にあるヤーリス港から船に乗った俺たちはプリメーラが話していたヴェゼル大陸へと向かっていた。
「ヴェゼル大陸は北にあるせいか極寒の大陸と呼ばれてるぐらい他のところよりも気温が低いからな」
そういえば船員たちがもうすぐ ヴェゼル大陸の唯一の港であるザッツ港につくという声が聞こえてきていた。
道理で急に寒く感じたわけだ。
「先に言っておくとだ、私たちが向かう場所は港から更に北を目指すからもっと寒くなるぞ」
「……聞きたくなかったなそんなこと」
こんなに寒いのなら素直にチェイサーの提案にのっておけばよかったと軽く後悔する。
「ゼストは寒いのは苦手なのか?」
「苦手というか、寒いところに行ったことがない」
ブラバスは温暖な大陸にあったためか、ここまで気温が下がったことはない。
「しょうがない、それなら……」
そう言ってプリメーラは右手の指をパチンと鳴らし、ストレージボックスを出現させると中に手を入れていく。
「ゼスト! プリメーラが変なところに手を入れてるんだけど、何をしてるの?」
その様子をナディアが驚いた表情で見ていた。
そう言えば、この子が見るのは初めてだったか……。
「お、あったあった……」
ストレージボックスから抜いた、彼女の手には白い四角の紙のようなものが2枚握られていた。
「……なんだそれ?」
「これは『ホットテープ』と言って服の上に貼り付けるだけで体を温めてくれる魔道具だ」
久しぶりに自信満々に魔道具の解説を始めるプリメーラ。
「このテープは魔力を一時的に貯めることができるソウジュの葉を何枚も使って作られている。持続時間は8時間ほどだが、改良を加えれば丸1日はいけるとおもうんだが、そうなるとソウジュの葉から改良をしなければならなくなるが……」
「ねぇねぇゼスト、プリメーラどうしちゃったの? 一人でずっと喋り出しちゃったけど……」
「……そっとしておいてやれ」
ちなみにプリメーラの独り言は10分ほど続いていた。
「っとまあ、話は長くなったが体を温めてくれるものだ、試しにこれをつけてみろ」
そう言ってプリメーラはホットテープを俺に手渡した。
「どこに貼ればいいんだ?」
「自分の好きなところに貼ればいいが……そういえば効果が一番いいと言われる場所があったな」
プリメーラは再度ストレージボックスを出現させ、手をいれていく。
「たしか、人間の体の構造を記した本がこの中にあったはず……お、これだな」
どうやら今度はすぐに見つかったようだ。
彼女の手には骸骨の絵が描かれた表紙の本が握られていた。
「たしかこの本によると……人間の血管はたしか……」
ペラペラと音を立てながらプリメーラはページを捲っていく。
「えっとだ……背中と腰に貼るのがいいみたいだな」
「それじゃ任せていいか?」
俺は受け取ったホットテープをプリメーラに返す。
「それじゃそこの椅子に座ってくれ」
言われた通りに近くにあった椅子に腰掛けると、プリメーラがその後ろに廻る。
「それじゃ失礼をするぞ」
一言告げると、きている服の背中から捲りあげていった。
あまりの寒さに俺はブルブルと体を震わせてしまう。
「ちょっとまて、それって服の上から貼るんじゃないのか?!」
彼女の奇怪な行動に俺は叫ぶが、反応をまったくせずに俺の背中をジッとみていたが
次第に、ペタペタと俺の背中に触れ始めていた。
手が冷え切っているのか、異常に冷たく感じるんだが……!?
「よし、堪能できたからちゃんと貼るとしようか」
プリメーラは捲っていた服をおろすとその上から勢いよくホットテープを貼っていく。
「貼ったぞ、どうだ暖かくなってきただろ?」
彼女のいう通り、背中と腰のあたりがジワッと暖かくなってきていた。
たしかにこれなら寒さを堪えることはできそうだ。
「……そもそも何で服を捲りあげた?」
「寒くなると人肌が恋しくなるというだろう?」
プリメーラは自信たっぷりな顔でそう答えていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「思っていた以上に吹雪いてますね……」
銀色の鎧に身を包んだ少女、セリカは一人でアコード雪原を進んで行った。
彼女の目指すはアコード雪原を抜けた先になるオーガ族の集落。
彼女に与えられた使命はその集落にある聖剣の力を封じている結晶を破壊すること。
「魔族に協力した人間たち以外の種族が聖剣の力を恐れて力を封印……なんて愚かなことを」
セリカは国王であるイソッタから聞いた言葉を口にしていた。
ブラバスの国王であるイソッタから魔族が復活しつつあると聞かされており、そのためには聖剣ソアラブレイドの真の力の解放が必要であると。
「これは私の使命……勇者となった私の……!」
力強い足取りで前と進んでいく。
「……どうやらあれのようですね」
黙々と進んでいくと、遠くに灯りが見えていた。
その灯りにセリカは安心したのか周囲への警戒を解いてしまう。
その瞬間、彼女の片足は宙へと浮く。
「しま……っ!」
気づいた時には既に彼女の体は深い谷底へと落ちていた。
——まだ、私は何をしていない……
セリカの意識はゆっくりと遠のいていった。
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【あとがき】
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