第30話 新たなる旅路、次なる脅威

 「もういっちまうのか?」


 日が昇り始めた直後の朝、屋敷の主、チェイサーは寂しそうな顔で俺たちを見ていた。


 「まあな、いい加減世話になりっぱなしも気が引けてきたしな」

 「別にそんなこと気にするなよ、おまえがよければこの近くにおまえの屋敷を建ててやってもいいって父上もいってたぜ」

 「余計気が引けてくるじゃねーかよ」


 俺は笑いながら返す。

 

 「ゼストー! プリメーラ連れてきたよー!」


 屋敷の奥からナディアが元気の良くこちらへ向かってきていた。

 その後ろでは眠たそうに彼女に引っ張られているプリメーラの姿もあった。


 「出発するとは言ったが、いくら何でも早すぎじゃないか……もう少しゆっくりしても」


 プリメーラは大きなあくびをしていた。


 「ゼスト、私はいつでもいけるよ!」


 ナディアは目を輝かせながら話す。


 「本当に俺たちとくるのか? チェイサーはここに住んでもいいと言ってるが」

 「ゼストたちと一緒に行く!」


 ナディアは大きく首を左右に振る。


 「ずいぶんと懐いたみたいだな、ずっとおまえにべったりだったし」


 チェイサーは揶揄うように笑うが、すぐに何かを察知したかのようにピタッとやめていた。


 「そ、それで……どこに向かうんだ?」

 「……ヴェゼル大陸に行こうと思っている」


 眠たそうに目をこすりながらプリメーラが答える。


 「ヴェゼル大陸ってたしか、オーガ族が住んでいると言われてる場所だな」

 「そうだな、強靭なオーガが住むだけあって、とんでもなく寒い場所だから避けたいところだが」

 「……なにかあるのか?」


 俺が聞くとプリメーラは口元に手を置いて考えるしぐさを見せていた。


 「まだ、仮説かもしれないが……誰かがコンチネントエビルを甦らそうとしているのではないかと思ってな」

 「それってこの前のゴーレムみたいなやつだよね?」


 恐る恐るチェイサーが聞くとプリメーラはコクリと頷く。


 「この前、チェイサー殿に許可をいただいて、国立図書館で調べていたのだがゴーレム以前にゼストが倒したアビスワームもコンチネントエビルだったようだ。 詳しく調べてみないとわからないが誰かが封印と解いたのだろう。 理由はわからんが」

 「ってかヴェゼル大陸にその魔物がいるってことはそこにいるオーガたちもライカンスロープたちみたいに封印をやぶらないように守っていたりするとか?」

 「その通りだ、さすがはチェイサー殿だ」


 プリメーラの返しにチェイサーは少し照れた表情を見せていた。


 「オーガ族にも知り合いがいるので、今回のことを話してみようと思っている。 もし今回のようなことがあった際は……」

 

 そう告げるプリメーラは俺の顔を見る。


 「今回みたいに倒せってことか、まあ俺にはそれしかできないしな」

 

 プリメーラの顔を見て話しているとナディアが間に入ってくると……


 「私もいるから!」


 不服そうな顔で答えていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

「さすがは強靭な肉体を持つと言われてるオーガ族め、なんてところに住んでやがるんだ」


 ヴェゼル大陸にあるアコード雪原にて、銀色の鎧を纏った男が苦しそうな声をあげていた。


 この大陸自体北に位置する大陸のため、1年中雪が降り続いている大陸と言われている。

 その中でもこのアコード雪原は豪雪地帯と言われ、この場所と比べて雪のふる量が段違いだと言われている。


 その地形を活かして先住民であるオーガ族たちはアコード雪原の奥にあるエリシオン峠に住み続けている。

 

 オーガ族に比べて強い体を持たない人間たちにとっては脅威そのものであった。

 男の周辺には野営のためのテントがいくつか貼られているが、中ではこの地の脅威に耐えきれなくなった者たちが横たわっていた。その中には顔から全身を布に包まれている者も……。


「だが、ここを打破しなければ我々は国に変えることはできんぞ!」


 苦しそうに大声を上げる男の言葉に周囲の者たちは静まり返っていく。


「……それなら私1人で行きます」


 男たちの中に混じった1人の少女が声を上げる。

 その少女は薄い黒髪をたなびかせ、周りの男たちと同じように銀色の鎧に身を纏っていた。

 周りの男たちと違うのは腰元の鞘に収められた剣。


「で、ですが……! 体力に自信のある大の男があのザマですのに、あなたのような年若く……ましてや女性が行くのは」


 男の言葉に少女は鋭い目つきで睨みつける。

 よほど恐怖に感じたのか話をしていた男は大きく目を見開いてガクガクと震えていた。


「ご安心ください、私にはこの剣の加護がございますので」

 

 そう告げた少女は鞘から剣を取り出すと周辺の男たちに見せるように掲げていた。

 少女の掲げた剣の刀身からは神々しい光が放たれていた。


「明日、ここを出発します、皆さんは病気の方や怪我人の介護をお願いいたします」


 剣を鞘に収めた少女は必要事項を告げると、その場を去っていく。


「……末恐ろしい嬢ちゃんだぜ、国王様の目が無ければ夜の相手にしてやるのにな!」

「やめとけ、おまえじゃ返り討ちにあうだけだ」

「にしてもあの剣は一体何なんだ? 加護があるとかなんとか言ってたけど」

「おまえ知らないのかよ、あの剣は王都ブラバスの守り神とも言われる聖剣ソアラブレイドだぞ!」

「ま、まじかよ!? ってことはあの嬢ちゃんはもしかして!?」


 相手の男は恐る恐る、彼女が3代目の勇者のセリカ・サイオンだと話していた。


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【あとがき】

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