国王殺しの罪を着せられ国を追放された元勇者、旅の女エルフと出会い旅にでる。 旅を続けていくうちに、女エルフのスキンシップが増えてるような気がするが考えすぎだろうか?
綾瀬桂樹
第1話 勇者陥落
「ゼスト・インテグラ! 貴様を国王殺害の罪で死罪とする!」
王都ブラバス。
勇者が生まれた地として栄えて来た由緒あるこの国で事件が起きた。
長くこの国の繁栄を築き上げていた国王であるアルシオーネが何者かによって殺害された。
国民が悲しみに打ち拉がれる中、一人の男が幽閉された。
男の名はゼスト・インテグラ。
このブラバスで生まれ、勇者のみが持つことを許される聖剣に選ばれし勇者の名だ。
だが、今は両腕を鉄の鎖をくくりつけられ、複数人の兵に取り押さえられている。
「俺はやっていない!」
俺、ゼストは王座の前に立つ男、国王アルシオーネの第一子のイソッタ王太子へ向けて必死に叫ぶ。
「やっていないのであれば、なぜ貴様はあの時、国王の寝室にいた!」
「そ、それは……!」
たしかにあの時、俺はアルシオーネ王の寝室にいた。
もちろん殺害など考えておらず、単純に王に呼ばれていたからだ。
ただし、このことは誰にも話すことのないようと……。
「何だ、言えぬのか! やはり国王に手をかけたのはゼスト貴様で間違いないようだな!」
王太子は持っている自身の杖をこちらへと向けていた。
「信じてください、俺ではありません……! それに俺が着いた時に既に国王は——」
「ええい、黙れ! 謀反者の言い訳など聞くつもりはない! この薄汚い男を牢の中へと放り込んでおけ!」
王太子はそう告げるとこちらに背を向ける。
「俺の話を聞いてください王太子!」
俺は必死に叫び続けるも、王太子はこちらへ振り返ることはなかった。
「本来であればこの場で首を刎ねても構わんのだが、明日の公開処刑まで猶予をやろう! 自分のやったことを薄暗い牢の中で悔やみ続けるがいい!」
そして王太子は高笑いをしながら、奥へと消えていった。
俺は兵士たちに地下牢へと連れて行かれた。
「明日の朝、貴様の公開処刑が行われる、逃げ出そうなんて考えないことだな」
兵士は俺にそれだけを告げると、鉄格子を勢いよく閉めるとその場から立ち去っていった。
俺は糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちていった。
「……どうなっているんだよ」
俺は誰に問いかけるわけでもなく一人呟く。
『勇者ゼストの誕生だ!』
辺りが真っ白になっていた。
その中でうっすらと見覚えのある光景が映し出されていた。
「あの儀式か、懐かしいな……」
2年前、この国で行われる勇者降臨の儀というものが行われた。
この国では男女問わず16歳になるとこの儀式に参加することができる。
儀式の内容は簡単なもので。
この国に代々語り継がれる聖剣ソアラブレイドを引き抜いたものが勇者として認められる。
そこで俺は見事、聖剣を引き抜いた。
『ゼスト・インテグラ、その力で是非、この国を守っていってほしい』
これがアルシオーネ王にかけられた最初の言葉だ。
この時の国王の微笑む顔が忘れられない。
俺はその顔を見てこの方に一生忠誠を誓った。
真っ白だった空間が色づき始め、俺の目の前にはゴツゴツとした石壁が映し出された。
「夢か」
どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。
どれくらい寝ていたのだろうか、国王の前に連れてこられた時は夕飯時だった。
もしかしたら朝になっているのかもしれない
そんなことを考えていると、部屋の奥から足音が聞こえてきた。
『明日の朝、貴様の公開処刑が行われる』
俺をここに連れてきた兵士の言葉を思い出す。
どうやらかなりの時間寝ていたようだ。
「どうやら俺の一生はここで終わりみたいだな……」
この足音は兵士のもので、公開処刑が行われる場所に連れて行かれるのだろう。
「……ゼスト・インテグラだな」
だが、俺の予想は大いに外れていた。
鉄格子の前に立っているのは兵士ではなく、頭から茶色のローブを纏った人物だった。
声からして俺よりもだいぶ年上の男だろうか。
「そうだけど……」
俺が答えると、ローブの男は懐から鍵を取り出すと鉄格子にかかっている鍵を解除し扉を開ける。
「お、おい……どういうつもりだ」
俺が驚きのあまり大声をあげるとローブの男は右人差し指を自身の唇に当てる。
静かにしろと言いたいのだろうか。
「安心しろ、俺はお前の味方だ、それよりも早くここから逃げ出せ」
ボソボソとローブの男は話す。
「逃げろってどこへ……」
「この国の外だ……その時が来るまで生き延びろ」
ローブの男は俺の腕を掴むと走り出した。
「脱走だ!!!」
地下から駆け上がっていく途中で、兵士の大声が広がっていった。
目前には各々武器を構えた兵士たちがこちらへと向かってきていた。
「……思っていたよりも早いな、仕方ない」
ローブの男は腰にかけた鞘から剣を取り出した。
「ここは俺がひきつける、お前は早くこの国の外へと出ろ」
男はそう告げると兵士の元へと駈けていった。
「……すまない!」
それは小声で男に告げると、城の外へ向けて走り出していた。
「脱走者はこちらだ!!!」
数多の兵士の中を掻い潜りながら城の外へと抜け出すことができたが、城壁に立つ見張りの兵士から無数の矢が降り注いでいた。
肩や腕に矢が刺さりきていた服へと血が滲み出ていた。
痛みに耐えながら城下町へと走っていく。
「きゃああああああ!!!」
「お、おい国王殺しがいるぞ、兵を呼べ!!!!」
城下町にいる国民に見つかり、大騒ぎになっていく。
つい数日前まで、勇者様と声をかけてくれてたのに、もう国王殺しになってしまったのか……
そして何とか、王都の外へと逃げ出すことができた。
だが、目の前には深々と生い茂る森。
昼間なら日の光が降り注ぐため、視界も良いのだが、あいにくと今は夜。
「これなら見つかることは早々ないだろう……」
息を整えながら王都を囲うようにそびえ立つ深い森の中へと歩き始めていった。
かれこれどれくらい歩いただろうか……。
ずっと動き続けていたためか、足に限界がきてしまい、大木を背にしてその場へと座り込んだ。
肩と腕に目を向けると、矢が刺ささったままになっていた。
そのおかげで大量の血を流さずに済んでいるのだが、見ていて痛々しくなってくる。
「……これからどうすればいいんだ」
助けてくれたローブの男は時が来るまで生き延びろと言っていたが……。
俺はブラバス王国にずっと住んでいたため、外の国については全くと言っていいほど知らないのでいく宛など全くなかった。
どうするか考えたいところだが、疲労感が押し寄せてきて思考がうまく回らなかった。
「……ここまでくれば少し休めそうだな」
少し休めば頭も回るようになるかもしれない……。
俺は一息ついて、上空を見上げる。
本来であれば目を瞑って仮眠をとるところだが、火を起こしていない状態で寝たら獣たちの餌になること間違いなしだ。
そのため、ボーッと空を眺めることで疲れをとっている。
「グオオオオオオオオオ!!!!」
だが、突如聞こえた叫び声に俺は現実へと戻される。
声の方へと目を向けると、巨大な体躯の影と小さな影。
「……マジかよ」
すぐに立ち上がり俺は声のした方へと再び走り出していった。
==================================
【あとがき】
お読みいただき誠にありがとうございます。
カクヨムコンに参加いたしました!
受賞目指して頑張りますのでこれからどうぞ、宜しくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます