第42話 宴の夜 後編
「ゼスト様!」
「は、はい!」
目が据わったセリカに睨まれて何故か敬語になってしまっていた。
そのセリカの隣で俺を見ていたプリメーラがケラケラと笑っていた。
これだから酔っ払いは……。
「ブラバスを出てからずっとプリメーラさんと2人きりで旅をしてきたそうですが!」
「そ、そうですね……!」
会った時から冷静沈着というべきか、物静かな感じだったセリカがお酒でこうも変わるとは……
お酒の恐ろしさを改めて思い知る。
「おふたりは……! えっとその……交わりあったりはしたのでしょうか!」
セリカの発言に俺は飲んでいたお酒を吹き出してしまう。
「あぁ、もちろんあったとも! それはもう朝まで2人の熱は冷めることは——」
「あ、あるわけないだろ!! プリメーラ、勝手に話を捏造するな!」
俺はプリメーラに向けて怒鳴るが、言われた本人は豪快に笑っていた。
「ねぇねぇゼスト?」
俺の隣でナディアが目を輝かせながら俺を見ていた。
「どうした?」
「交わるってなに?」
「……うん、ナディアにはまだ早いから今聞いたことは忘れような、絶対に他では聞くんじゃないぞ」
俺はナディアの頭を撫でながら言い聞かせると、尻尾をブンブンと振り回していた。
「やっぱりあるんですね……」
セリカは下を向くとワナワナと体を震わせていた。
ギシギシと音がしそうなぐらい、右手を強く握りしめられている。
「それなら私もゼスト様と交わらせてください!」
「堂々と言えることじゃないからな!」
セリカの顔をみると真剣な眼差しだった。
まあ、彼女の場合冗談なんかいえるような性格でもないが。
「残念だが、セリカ殿ではゼストは満足させることはできないな」
プリメーラはグラスに入ったお酒を再度飲み干すと、自信たっぷりな表情で立ち上がる。
「……それどういう意味ですか?」
「自分の胸に手を当てて考えてみればわかるんじゃないかな〜?」
プリメーラは上機嫌にセリカに告げる。
言われた通り、セリカは自身の胸に手を当てるとプリメーラの言っていることに気づいたのか、じっと目の前を見ていた。
……いや、睨みつけてると言った方が正解かもしれない。
「どうやらわかってみたいだな、つまりはそういうことだ!」
プリメーラは勢いよくセリカに向けて指を差していた。
何故かもう片方の手は腰に手を添えている。
「そ、そうなんですかゼスト様!」
「ち、ちが——!」
完全に否定しようと思っていたが、プリメーラが俺の腕にしがみついてきた。
それと同時に柔らかい感触が腕から伝わってきていた。
「よーくゼストを見てみろ、喜んでいるだろう?」
喜んでいないと……とははっきり言えないがこの場でそんなことを言えば、2人の会話に火に油を注ぐようなものだ。
「……どうみても喜んでるようにはみえないですが?」
「ゼストは恥ずかしがり屋だからな、人前ではみせないのさ、これが2人になれば……」
「ぐっ……!」
セリカは握り拳を作ると、すぐに反対側の腕を掴むと、プリメーラと同じようにしがみついてきた。
ささやかではあるが、セリカの方からも柔らかい感触が腕から伝わっていた。
「私の時の方が喜んでいるみたいですよ、ゼスト様はそんな堕肉には興味ないみたいですよ!」
「喜んでいるんではなく、あまりの慎ましさに笑いを堪えているだけだ、なあそうだろ、ゼスト!?」
正直どっちでもいい……。
とりあえず今はゆっくり酒と食事を楽しませてほしい……。
こんな些細な俺の願いは2人の耳に届くことはなかった。
「ゼスト様、どちらですか!」
「ゼスト、もちろん私の方にきまっているよな!」
セリカとプリメーラは同時に俺の顔を見て叫ぶ。
そして、互いの顔を見て睨み合っていった。
「ねぇねぇゼスト、プリメーラとセリカどうしちゃったの?」
2人が離れるとすぐにナディアが俺の腕を掴んでいた。
「あの2人はお酒の魔力にやられてんだ……ナディアは絶対にそんな風になるなよ?」
「よくわかんないけど、わかった!」
そう言ってナディアは嬉しさからか、俺の腕に抱きついていた。
腕からふにふにと心地いい感触がしたが、気のせいだろう。
今の俺はナディアの笑顔があまりにも眩しすぎて思わず彼女の頭を撫でていた。
「うへへ〜ゼストだーいすき!」
その言葉は歪みあっていたセリカとプリメーラには衝撃的だったようだ。
「ゼスト様……! 何で私の時には何もしれくれなかったのに」
「何でナディアの時だけ……!」
そのまま2人は操るものがいなくなった人形のように崩れ落ちていく。
次第に夜も更けり、宴も終わりを告げていった。
「さてと、それじゃ屋敷に戻るか」
「うん! ってセリカとプリメーラはどうする?」
ナディアの視線の先にはここち良さそうに眠るセリカとプリメーラの姿。
「……俺が運ぶから、ナディアは先に戻っててくれ」
「わかった!」
ナディアの姿が見えなくなった後、俺は両脇に2人を抱えて屋敷へと向かい、それぞれのベッドに下ろした。
「若さが必要……」
「慎ましくなんてないもん……」
2つのベッドからはそれぞれ寝言が聞こえていた。
俺は自分のベッドへと入るまえにこう誓ったのであった。
——もう二度と宴などやらないと。
そして、俺の意識は夢の中へと進んでいった。
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【あとがき】
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