第10話 次の大陸に立つ

 「いい天気だ」

 

 甲板へと出る扉を開けると、日差しが俺の顔に直撃していた。

 空には雲ひとつない青空が広がっていた。

 

 クラーケンを撃退してから2日が経った。

 あれからは魔物の出現などのトラブルもなく平穏無事な日々を送る事ができていた。

 船長の話ではもうすぐ目的のゲンバラ大陸に着くとは話していたが……。

 

 「ゲンバラ大陸が見えてきたぞー!」

 

 甲板でそんなことをのんびり外を眺めていると見張り台に登っていた船乗りが大声を上げていた。

 船首の先にはうっすらとだが、大陸が見えていた。


 「ようやく着いたな、クラーケンが来なければもっと早く着いたのにな」


 プリメーラは俺の隣で大きくあくびをしていた。

 

 船はゲンバラ大陸の港にたどり着くと俺たち以外のお客をはじめ、多くの人が降りていく。


 「そっか、ボウズたちはここで降りるんだったな」


 港へと降りていくと、大きな声が聞こえてきた。

 声の方へと振り向くと船室の扉の前に船長が立っていた。


 「ありがとうございました、とてもよかったですよ!」

 「礼を言うのはこっちだ! 下手したらあの魔物に食われちまってたかもしれねーしな!」


 船長は豪快に笑っていた。

 

 「船長さんたちはすぐに出発するんですか?」

 「そうだな、ここで食い物や酒の補給をしたらこの先にある大陸に向けて出港する、船員たちも疲れているから明日の朝ぐらいまではここにいるかもしれんな」

 「そうですか、気を付けてください!」

 「おう! ってそうだそういや名前を聞いてなかったな!」


 たしかに言われてみれば名乗った覚えがなかった。

 船長も俺のことはボウズだし、プリメーラは嬢ちゃんだった。


 「ゼストです」

 「プリメーラだ」


 名乗った後、再度礼を言ってその場から歩きはじめた。



 「ゼスト……? もしかして、ブラバスの勇者なのか? でもたしか国王を殺害したとか聞いたが……」

 

 しばらく腕を組んで悩む船長。


 「いや、あのボウズがそんなことするわけないな」


 豪快に笑いながら再び船室の中に入っていった。


 


 「ゼスト、ゲンバラ大陸は初めてか?」

 「名前は聞いたことあるが、実際に来るのは初めてだな」


 ゲンバラ大陸ははるか昔に火山の噴火によってできた大陸だと言われている。

 そのためこの大陸は岩山に覆われている。ここにある岩は頑丈さや熱に強いとされているため、武器や防具に使われている。


 「それで、これからどこに向かうんだ?」

 「ドワーフの住む洞窟だ」


 ドワーフと言うのは、鍛治を得意とする種族だ。

 

 「大丈夫なのか? ドワーフは人間を恐れていると聞いているが……」


 どんな理由があって言われているか不明だが、ドワーフたちは人間を恐れていると聞いている。

 

 「私がいれば問題ないだろう」

 

 プリメーラはふふっと笑っていた。


 「それじゃ出発するとしよう」


 そう告げるとプリメーラは先頭を切って歩きはじめた。

 



 「ここがドワーフたちが住んでいるストーラ山だ」


 出発してからかなりの時間歩き続けていた。

 初めは平坦な道だったが、途中から険しい山道へと入っていった。

 そして登っていくこと数時間、岩山の中に大きく開いている入り口へと辿り着いた。


 「ずいぶん登ったな、気がつけば日が沈みかけてるし……」


 歩いてきた場所を見ると、港の方では今には太陽が海の中に入り込もうとしていた。


 「今日はドワーフたちのところで休ませてもらうとしよう、食事とお酒は期待できないと思うが」

 「……あれだけ大惨事を繰り返してもまだ、酒を飲みたいと思うのか」

 「知らないのか? お酒は百薬の長と言われているんだぞ」


 胸を張って自信満々な顔で力説するプリメーラ。

 俺はため息だけついて洞窟の中へと入っていった。


 

 「真っ暗になってきたな」


 洞窟の中を歩いていくうちに目の前が真っ暗になっていた。

 途中までは入り口からの明かりが入り込んでいたので、問題なかったが奥へ進むほど光がなくなっていた。


 「それじゃ、そろそろコイツの出番だな」


 プリメーラはパチンと指を鳴らし、小さな穴を開けると中に手を入れていった。

 魔道具の1つであるストレージボックスだったな、たしか。


 「よし、これだ!」


 グイッと手を引っ込めると彼女の手には銀色の物体があった。


 「ランタンか?」

 「そうだが、これはそこら辺にあるランタンとは違うぞ」


 自信たっぷりに答えるプリメーラ。


 「これは魔道具の一つ、マジックランタンだ!」


 大声を上げながらランタンを掲げていた。


 「ランタンは火をつけて使うもんだが、これは溜め込んだ魔力を媒体に光を発するものになっているんだ」


 聞いてもいないのに意気揚々と魔道具の説明を始めるプリメーラ。

 その説明は止まる事なく次々と話しはじめていった。


 「残念なことに魔力をうまく扱えるものにしか使えないのがネックだな、どうにかして改良をくわえ——」

 「——わかったから先に進むぞ!」


 なんとか必死に説明を中断させる。

 そうでないと永久的に話を聞くことになりそうだ。


 「そうだな……」


 なぜか寂しそうな表情をしながら、マジックランタンに触れるプリメーラ。

 すると、ランタンそのものから淡い光が帯びはじめていった。


 「よし、先に進むぞ」


 周りが明るくなったのを確認すると奥地へと進みはじめた。



 「プリメーラ、ストップだ」


 先頭を歩くプリメーラに声をかける。


 「どうしたんだ?」

 「……魔物がいる」


 俺が説明すると、プリメーラはランタンを前に向ける。

 洞窟の先からゆっくりとこちらへ近づいてくる影があった。


 「……サーペントか」


 プリメーラは魔物の姿が見えると、名前を口にしていた。

 そして、ウネウネと体を地面に密着させながらこちらへと姿を見せた。


 獲物を見つけたと言わんばかりに大きな口を開けながら——


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【あとがき】

お読みいただき誠にありがとうございます。


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受賞目指して頑張りますのでこれからどうぞ、宜しくお願いいたします!

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