第11話 地底の目的地へ

 「サーペントか、ずいぶん厄介な敵が出てきたな」


 魔物の姿を見て、プリメーラが呟く。

 サーペントは洞窟に棲む蛇型の魔物で、毒は持っていない。

 だが、こいつは相手に体を巻きつき、窒息をさせてから飲み込んで食べてしまうという。

 戦うのは初めてではないが、油断でできない相手なのはたしかだ。


 「プリメーラ、ランタンで前を照らしてくれ、こいつは俺がやる」

 「わかった」


 俺はラファーガを構えて、サーペントに近づく。

 サーペントは俺を目掛けて体をバネのようにして飛び上がった。

 

 「バレバレだ!」


 飛びかかろうとしている魔物向けて大きく剣を横薙ぐとベチャッと音を立てて、両断されたサーペントだったものが地面に叩きつけらた。


 動かないことを確認して、一息をつこうとしたが……


 「ゼスト、上だ!」


 後ろにいるプリメーラの声ですぐに上を見上げる。

 天井にへばりついていた別のサーペントが大きく口を開けながら落ちてきていた。

 俺はその口に向けてラファーガを突き刺す。

 立てに切り落とされたサーペントの体がボタっと地面に叩きつけれる。


 「ありがとうプリメーラ、助かったよ」

 「いや、安心するのはまだ早い……!」

 「まだいるのか……!」

 

 すると、奥の暗闇から地面を擦る音が聞こえていた。

 

 「どうみても1体だけじゃないよな、このすごい音は……」

 「あぁ、サーペントは1匹いたら近くに100匹はいると言われているからな」

 「……考えたくもないな」


 こんなところで数百匹のサーペントに襲われたらひとたまりもない。


 「それなら……」


 ラファーガを再度構えると俺は大きく息を吸い込む。


 「何をするんだ?」


 プリメーラに答える前にラファーガを地面に叩きつけると、地面が盛り上がり奥へと飛んでいった。

 その奥では何かがつぶれる音や、突き刺さるような音など耳を塞ぎたくなるような音が響き渡る。


 「少し待って何も出なかったら全部倒せてるだろう」


 すぐに後ろを振り向くと、プリメーラが呆れた顔で俺を見ていた。


 「……ゼスト、ここを洞窟ってことを忘れていないか?」

 「わかってるよ、かと言って奴らが数百匹もおしよせられたらひとたまりもなかったぞ」

 「それはそうだが……少しは私に相談してほしいものだな、何のために一緒に行動しているのか、わからないぞ」

 「悪かったよ、次からそうする」


 プリメーラに向けて頭を下げる。


 「まあ、ゼストの言うことも一理あるからな……」


 プリメーラはバツが悪そうな顔を浮かべながら盛り上がった地面を避けながら先を進んでいった。



 「ふぅ……さすが洞窟の中だな、魔物が多いことで」


 大量のサーペントを撃破して奥へ進んでいったが、サーペント以外にも血を好むブラッドバット、天井にくっつき、数えきれない触手で入ってきたものを襲いかかるルーパーボールなどの魔物と遭遇するが、全て撃退。

 それでも終わりの見えない道に少し疲れも出てきていた。


 「たしかもうすぐ着くはずだ」

 

 プリメーラはランタンで前を照らしながら進んでいくと、突然足を止めた。


 「もしかして、また魔物がでたか?」

 「いや、着いたぞ」


 そんな雰囲気は微塵もないが、彼女が立っている場所に立つと、大きなカゴのようなものが置かれていた。


 「……何だこれ?」

 「たしか昇降機とか言ったかな、これで一気に下のドワーフの集落に行く事ができるんだ」


 プリメーラは昇降機と呼ばれる箱の扉を開けて中に入る。


 「ほら、ゼストも中に入るんだ」

 

 プリメーラは俺に向けて手を差し伸べる。


 「……これしか方法はないのか?」

 「あると思うが私は知らないな」


 彼女の返答にため息をこぼしながら、ゆっくりと中に入っていく。

 中は思ったよりも狭く俺とプリメーラの体が密着してしまう。


 左腕にやけにふわふわ感触が伝わってくる。

 理由はあえて言うまい。


 「たしか、このレバーを下に下げるはず」


 プリメーラは目の前にあるレバーを下に下げた。

 昇降機がガタガタと震えたと思ったら、勢いよく下に降りていった。

 いや、降りるって表現じゃないな、これは落ちるだ……。


 「うわあああああああああああああ!!!!」

 「この何とも言えない浮遊感は何とも言えない気持ちにさせてくれるな」


 大声を上げる俺に対して女エルフは悦に浸っていた。



 「さあ、着いたぞ! ここがドワーフの集落だ」


 フラフラになりながら昇降機の中から出ると、ものすごい熱気が肌に当たる。

 辺りを見渡すと、岩で作られた建物が立ち並び、所々にはドロドロとした赤い水が流れていた。

 火山大国と言われているから、マグマだろう。たしか鍛治には必須だと聞いたこともある。

 

 そして、ここに住むドワーフたちの姿もちらほらと見えていた。


 「それじゃ早速、目的の場所に行くとしようか」


 プリメーラは意気揚々と歩き出していく。俺は彼女の姿を見失わないようにフラフラになりながら追いかけていった。


 プリメーラが足を止めたのは集落の中にある家。

 看板らしきものがあるが、そこに書かれている文字はまったく見たことのない言語だった。


 「……これなんて書いてあるんだ?」

 「鍛冶屋って書いてあるんだ」

 「なるほどな……」


 さすがは長く生きているエルフなだけあって、色々なことを知っているようだ。


 「ま、私もわからなくてここの住人に聞いたんだがな」

 「……さっきすごいと思った俺の素直な気持ちに謝れ」


 俺の返しにプリメーラはふふっと笑いながら扉をノックする。

 すぐ「はーい」と女性の声が聞こえると、中からバタバタと足音が近づいてきた。


 「どちらさまー? ってプリメーラさん!?」


 扉を開けたのはゴーグルをつけたボサボサの淡いピンクの髪。

 クリクリとした大きな目が特徴的な女性だった。


 「あぁ、久しぶりだな師匠。30年ぶりか?」


 他愛もなく話すプリメーラだが、感覚の違いがありすぎて俺は驚きを隠す事ができなかった。


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【あとがき】

お読みいただき誠にありがとうございます。


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受賞目指して頑張りますのでこれからどうぞ、宜しくお願いいたします!

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