第26話 地味豚公爵をプロデュース・③
正直、今の俺が怖いのは暗殺じゃない。
婚約の段階で、俺がエレーナ嬢を尊重できないような真似をしたら、傷つけてしまう。それが怖かった。
俺の身勝手だったり、無理強いはしたくないけれど、彼女にもワクワクするような毎日を過ごして貰えるようにしたかったから。
「手を握れなくてもいい、ただ側にいてくれるだけで、時々笑ってくれた瞬間なんか世界中が光り輝くようで、きっと彼女は優しい春の日差しの女神だって俺は思うし」
アズーランが何とも言えない顔になった。
「失礼ですが惚気なら有料でマオンに聞いて貰って下さい、もう……お腹いっぱいになりました」
「ごめんごめん、行こうか」
ゴトゴトと荷馬車に乗ってお弁当を配って歩くために耕作地に向かった。
みんな、俺が通りがかると作業を中断して集まってきてくれた。
「……え?」
「……閣下?」
「……閣下、です……よね?」
驚いてくれている。磨いてもらった俺を見て、驚いてくれている。
俺は嬉しくなって、エレーナ嬢が俺をしっかりと磨いてくれたこと、彼女が美しいだけじゃなくて本当に尊敬に値して天使か女神のように素晴らしい人であることを熱弁した――がアズーランが冷静に「弁当が腐る前に全員に配らなければいけないですよ」って止めてくれた。
「おめでとうございます!閣下!」
「閣下!今度こそお幸せに!」
祝福の声が心から嬉しい。
俺はありがとうと礼を言って、次の耕作地へと向かった。
「もう閣下を『地味豚公爵』なんて誰にも呼ばせやしないぞ!」
「閣下は……『英明公』だ!」
「そうだ、閣下は今や『英明公』だ!」
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