第19話 貴女がいれば全てが敵になっても構わない・①

 ……で、今。

 何なら、現在進行形。

 俺はエレーナ嬢が暴れているのをただただ見ている。


 あの……エレーナ嬢?

 火の破壊魔法で焼きながらジドールとユーファニア嬢に常に回復魔法をかけているのは……。

 あっ、はい、拷問ですか。

 あの、どうしてエレーナ嬢が拷問なんかをされているのでしょうか。

 はい、はい、たかが男爵の分際で公爵令嬢の私を呼び捨てにして『愛人の1人にしてやる』とほざいたから不敬罪……はい、分かりました。

 いえ、文句なんかありません。

 あの……ただ、何と言いますか。

 とっても良い笑顔ですね。

 まるで曙光のように美しい。

 ――あっ、照れた!

 天使が照れる顔を見られたなんて俺は世界一の幸せ者だと思っても良いのでしょうか。


 「いつでも来て良いですわよ。また私が手ずからこうやっておもてなししてやりますから」


 「ひっ!」

 「お、覚えていなさいよ!」


 捨て台詞を吐いて、ジドールとユーファニアは馬車に飛び乗って逃げていった。

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