第18話 無力だった過去・③
……ジドールは見た目は両親そっくりで秀麗だったが女癖は悪かったようで、王都で片っ端から令嬢達にちょっかいをかけて遊んでいた。
俺が14才の時にグレイグやクードが来てくれて『断る』『追い払う』ことが出来るようになるまでは、本当に辛かった。
度々、「お前の所の分家の一粒種のジドールが素行不良だ、どうにかしろ」と王宮から書状で呼び出しを食らっていたし。
貧乏すぎて10回に1回くらいしか行けなかったけれど。
そんな俺にも18才の日に婚約者が決まった。王宮からまたジドールのことで呼び出しを食らった帰り道に、財産家のマサムルン伯爵家から5人姉妹の一人を持参金ごとくれると話があったから。
…………ただし。
マサムルン伯爵家で開かれた夜会に俺と(勝手にくっついてきた)ジドールが参加した時、ユーファニア嬢が『地味豚公爵』の俺に目もくれずにジドールとばかり話していた時、俺が最終的に酔って庭で吐いた時、もうああなる運命は決まっていたんだろうと思う。
ジドールは俺の婚約が決まった直後にユーファニア嬢と駆け落ちした。
マサムルン伯爵は俺に一言も謝らず、婚約不履行による違約金の額だけを気にしていた。
ジドールが払うべき俺への慰謝料はあっさりとゼファンが払って、ほとぼりの冷めた1年後には2人は派手な結婚式を挙げて、そこに俺も招待したのだ。
行けるわけがなかった。
人生最大に惨めだったのもあるが、
「戦争だ戦争だ!拙者1人でも突撃する!」
「待て!今すぐに兵を募る!金ならもうある!」
「イヤン商会も今だけは武器を格安で売りますよ」
「テメエら俺様達を無視しやがるとは良い度胸だ!先陣は俺様に任せろ!」
「悔しい!悔しい!」
「閣下をここまでバカにして!」
「絶対に許さない!」
オールー公爵領にいるみんなと、ドミニク含め魔族のみんなの全員。世界樹さえ戦う気だ(あの、その、どうやって?)とデリアさんは言っていた。
そう。
俺に近しい全員が全員、ぶち切れて戦争を起こすと息巻いていたのを抑えるのに必死だったから。
それから6年。
季節ごとに王都とイルバス男爵領を行き来しながらアイツら4人は仲良く暮らしている。
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