番外編 兄を手にかけた弟・⑥

 ……なあフェルナンの兄貴、俺様ももうすぐおじいちゃんになるんだ。

この数年の間に娘二人とアズーランが続けざまに結婚してさ、あっという間にガキまで出来ちまった。もうすぐ生まれる、そうしたら一気に賑やかになるって嫁も嬉しそうで。

あーあ、どうせ俺様まで子守にかり出されて朝昼晩と大変になるんだろ?

よく分かってるぜ。


 巫女の姉貴と嫁と娘二人とアズーランの嫁が円いテーブルを囲んでやかましく話しながらさ、今、よだれかけとおむつをせっせと裁縫している。俺様達のような男共は窓辺で魔石の加工をちまちまとやっている。

 あア?この後は休憩がてら一緒にハーブティーを飲むだア?それまでに俺様達に焼き菓子を買ってこい?マカ……ロン?いや、俺様だってクッキーやケーキくらい知ってるぜ、だけどフロランタンって何だ?風呂で使うのか?フィ……なんだ?フィナンシェだア?何だそりゃ?

いいから早く買ってこいって、女ってどうしてこんなにワガママでうるせえんだよ……。

そりゃ反撃してえけど、一言でも文句を言ったら、数百倍の集中砲火を浴びてぶちめされるから俺様は黙っている。

嫁と娘二人だけでも厄介なのに巫女の姉貴まで加勢するんだぜ、絶対に勝てやしねえ。


 ああ、テメエら、早めに行こうぜ。遅くなったらまたうるさくなるからな。黙れ、ガキを仕込んだのはテメエらだろ。最後まで責任を取れ。次に文句を垂れたら殴る。

だからうるせえんだよ!いつ俺様がテメエらなんかの親父になった!俺様はまだテメエらを認めてねえからな。とっとと俺様の娘を返しやがれ。『子供も生まれるのに絶対に嫌です』だと!?孫を盾に取りやがって卑怯者め、テメエら後で覚えていろよ。



 ……兄貴を殺した手で孫を抱いて良いのか分からねえけどよ、出来ることはやっていくつもりだ。

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