第4話 地味豚公爵の人望・③
オールー公爵領にエレーナ嬢の花嫁行列(と俺が口にしたらパルベッヘル公爵家に殺されそうである)が到着した時、俺は驚いた。
「閣下バンザイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
「バンザーイ!バンザイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
熱狂している領民が街道の左右に何処までも並んでくれていたからだ。周辺一帯から集まってくれたらしい。
――うわっ!?
あちこちの村や街の長達が行列の前に飛び出してきた。
俺は慌てて馬を止めさせる。長達は我先にひれ伏しながら大声で、
「閣下、この度は何と目出度いことでしょうか!」
「僭越ながらどうか我が街の迎賓館にお越し頂けないでしょうか?」
「お前の所はこの前も行政官を増やしてもらっただろう!今は私に譲れ!」
「馬鹿を抜かせ!閣下のご婚約をお祝いできるのだ、私共にやらせろ!」
「肥だめ臭がするお前は引っ込んでいろ!」
「何だと!?汗臭い貴様が言うか!」
争うのは止めてくれ!
俺は彼らを慌てて呼び集めて、先にお触れを出した通りに、オールー公爵領の別邸があるオールーンの街までの道沿いにある宿泊施設ごとにエレーナ嬢の休憩を兼ねて泊まる……と言った、のだが。
「そんな!?」
「どうか泊まっていって下さい!」
全員引き下がらない。
まあ……俺の前回の婚約がメチャクチャになってから6年だ。俺ももう24で、貴族としては行き遅れの部類である。期待してくれるのは有り難いんが……。
「皆、済まないが寄り道をして、婚約者の体に負担が掛かるのは良くないんだ。それに雨季も近い」
どうにか全員を納得させると、俺は馬車から降りて、色々と遅れてしまったお詫びをエレーナ嬢に申し上げた。
「聞いていましてよ」
天使が微笑んでいる……。
あ、うん、きっと彼女は誰に対してもこの微笑みを向けてくれるのだろうから、俺の勘違いは良くないな!
「オールー公爵閣下は領民にもとても慕われていますのね」
「たまたま、俺のやっていることが成功しているだけで……」
「幸運も実力の一つですわよ。私、ますます楽しくなって参りましたわ」
※この間も背後のお綺麗なメイド二人から強烈な殺意の視線が飛んできています。
「ア、アリガトウゴザイマス……」
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